質問者:
自営業
嶋田誠一
登録番号2152
登録日:2010-02-24
作物に葉面散布を行う時、目的の肥料成分に尿素を混ぜると葉面からの吸収が高まるとよく言われるのですが、尿素を混ぜると本当に吸収が高まるのでしょうか。また高まるとしたら尿素がどのように働くのですか。
みんなのひろば
作物に対する葉面散布について
嶋田誠一 さん:
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
肥料の葉面散布は実際の農業現場でかなり用いられているようです。植物栄養学を専門とされている京都大学の 間藤 徹先生に伺ったお答えを中心にまとめました。
尿素は、生体pHでは非電解質のため、イオン性物質よりかなり速く細胞膜を透過し吸収されます。最近の研究では尿素分子を運搬する輸送体やチャンネルが細胞膜にあることも明らかにされています。体内吸収後はウレアーゼによってアンモニウムイオンに加水分解され利用されますが、過剰施用はアンモニアの過剰障害が心配されますし、尿素自体の過剰蓄積も有害との報告もあります。
尿素にはいわゆる界面活性剤(展着剤)としての機能はありませんので、尿素とその他の栄養素を混ぜても、他の栄養分の吸収が上昇することは考えられません。実際に尿素と他の栄養成分との併用散布の研究報告はたくさんありますが、尿素の併用が他の成分の吸収を亢進するとする報告は見つかりませんでした。おそらく、窒素の増施によって細胞の窒素代謝が亢進し、その結果、その他の物質の吸収が促進されたようにみえると推定されます。
植物は根から吸収する無機栄養分と地上部で行われる光合成によって正常に生育します。そのためふつうの状態では葉面散布は必要なものではないと思われます。植物はチッソ肥料の量にしたがって生育が良くなる傾向がありますが、土壌への過剰チッソの施肥は環境汚染の原因ともなるため土壌への施肥を減少させて尿素の葉面散布でこれを補うとか、比較的不足しやすい微量元素を葉面散布で補うという理由で行われてはいます。また土壌条件や植物自体の傷害や生理状態の異常で根からの吸収が十分でない場合には、それらを補うための葉面散布は効果があるとされています。ホウ素(ホウ酸)、カルシウム(たとえばリンゴ酸カルシウム)などの葉面散布が行われていますが、植物体内の含有量が閾値近くまで下がっている場合を除いては実際の効果は疑わしいものです。いずれにしても土壌からきちんと吸収できるよう環境を整えてあげるのが、コスト的にもベストだと思います。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
肥料の葉面散布は実際の農業現場でかなり用いられているようです。植物栄養学を専門とされている京都大学の 間藤 徹先生に伺ったお答えを中心にまとめました。
尿素は、生体pHでは非電解質のため、イオン性物質よりかなり速く細胞膜を透過し吸収されます。最近の研究では尿素分子を運搬する輸送体やチャンネルが細胞膜にあることも明らかにされています。体内吸収後はウレアーゼによってアンモニウムイオンに加水分解され利用されますが、過剰施用はアンモニアの過剰障害が心配されますし、尿素自体の過剰蓄積も有害との報告もあります。
尿素にはいわゆる界面活性剤(展着剤)としての機能はありませんので、尿素とその他の栄養素を混ぜても、他の栄養分の吸収が上昇することは考えられません。実際に尿素と他の栄養成分との併用散布の研究報告はたくさんありますが、尿素の併用が他の成分の吸収を亢進するとする報告は見つかりませんでした。おそらく、窒素の増施によって細胞の窒素代謝が亢進し、その結果、その他の物質の吸収が促進されたようにみえると推定されます。
植物は根から吸収する無機栄養分と地上部で行われる光合成によって正常に生育します。そのためふつうの状態では葉面散布は必要なものではないと思われます。植物はチッソ肥料の量にしたがって生育が良くなる傾向がありますが、土壌への過剰チッソの施肥は環境汚染の原因ともなるため土壌への施肥を減少させて尿素の葉面散布でこれを補うとか、比較的不足しやすい微量元素を葉面散布で補うという理由で行われてはいます。また土壌条件や植物自体の傷害や生理状態の異常で根からの吸収が十分でない場合には、それらを補うための葉面散布は効果があるとされています。ホウ素(ホウ酸)、カルシウム(たとえばリンゴ酸カルシウム)などの葉面散布が行われていますが、植物体内の含有量が閾値近くまで下がっている場合を除いては実際の効果は疑わしいものです。いずれにしても土壌からきちんと吸収できるよう環境を整えてあげるのが、コスト的にもベストだと思います。
京都大学応用生命科学専攻/JSPPサイエンスアドバイザー
間藤 徹/今関 英雅
回答日:2010-03-09
間藤 徹/今関 英雅
回答日:2010-03-09