一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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萎れている植物の気孔

質問者:   高校生   ash
登録番号2158   登録日:2010-03-04
初めて質問させていただきます。
萎れている植物の気孔は開いているのか閉じているのか教えていただけないでしょうか。
萎れている植物は水分を失っており孔辺細胞も膨圧が下がっているので気孔は閉じているのではないかと思うのですが、蒸散は根からの吸水の原動力でもあり、萎れている植物は根からできるだけ吸水しようとして気孔を開けて、蒸散を盛んにするのではないかという考えもできます。一体どちらなのでしょうか。
よろしくお願いします。
Ash さま

葉の細胞水分の含量が低くなり、その結果、葉の細胞の膨圧が低くなると葉が萎れますが、この時、気孔の周りにある孔辺細胞の水分含量も低くなり、その結果、膨圧も低くなって気孔が閉じるようになります。気孔の開閉は膨圧ばかりでなく孔辺細胞で作用するアブサイジン酸(植物ホルモン)、カリウム・イオン濃度によって制御されていますが、これらについては質問登録番号1195などへの回答を参照して下さい。

一般に葉が萎れた状態になるのは、土の中での水分濃度が低くなり、根が土から水を充分に吸収できなくなり葉の細胞に水を送れない時です。この様な時、気孔から蒸散によって失われる水の量が、根から葉に送られる水の量に比べ多くなり、その結果、葉の細胞の水分含量が低下し、そのため膨圧が低くなり萎れた状態になります。

根から水を吸収できない時、葉の細胞内の水分レベルを保つために気孔が閉じますが、気孔が閉じると光合成のためのCO<sub>2</sub>を吸収できなくなり光合成を進行させることができなくなります。さらに蒸散作用によって葉の温度を調節できないなど、気孔が閉じると植物の成長にとって不利になります。しかし、葉の光合成など多くの代謝や、また、細胞の構造や酵素の活性を維持するために最低限の細胞水分が絶対に必要です。萎れた状態になって一時的に光合成ができなくとも、土に水が再び供給されれば、光合成に必要な酵素などを一から合成しなくとも、直ちに光合成を再開することができます。

この様に植物は水ストレスの時に気孔を開いて蒸散を盛んにすることはなく、できるだけ気孔を閉じて細胞内の水分を失わないようにしています。御質問のように、水ストレスの時に気孔を開けて蒸散を盛んにすると、葉の細胞水分がゼロ近くになってしまい、葉の多くの酵素、細胞オルガネラ、膜構造などの機能が不可逆的に失われ、それを一から作り直さなければならないようになります。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2010-03-15
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