一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ネギオールに生化学的裏づけありますか

質問者:   一般   のんくら
登録番号2166   登録日:2010-03-30
ネギの含有成分として「ネギオール」記事がネット上に多数あります。
白部に含有し殺菌・抗ウィルス作用があるとか。

しかし、構造式などの裏づけ記事はみつけられません。
・名前からして怪しそうですが、生化学的裏づけはあるのでしょうか?
・硫化アリル以外にネギに特徴的な成分があれば教えて下さい。
のんくら さま

ネギオールについて、手元の植物関係の辞典には見つかりませんでしたので、植物成分を研究され、この方面について詳しい京都大学生存圏研究所の矢崎一史先生にお尋ねいたしましたところ、次のような回答を頂きました。


天然物の名前の付け方については、1960-1970年代迄は研究者が植物から単離し、構造を決定した研究者が勝手につけてもよいという慣習があって、ショウガから単離したからShogaol、フウロソウから取ったからFurosin、もっとひどいものになると横野さんが単離したからYokonoside とか、それぞれ、発見者が命名自体を楽しんでいた時代がありました。しかし、現在は植物の学名に準拠するようになり、ある植物から新しい成分を単離し、その構造を決めても、ネギの学名(Allium)を入れることが、論文投稿の際に求められます。1970年代までに構造が決定され、名前が決まった化合物については、当時の化合物名はそのまま正式名称として現在でも用いられています。ショーガオールが正式にあるのですから、ネギオールもあってよさそうですが、このような命名が許されたのは30年以前であり、もしその頃に単離されていれば現在の多くの専門辞典に掲載されているはずです。

研究分野によっては、植物のエキスにあたかも化合物のような名前を付ける例もあります。例えば、セイヨウニワトコ (学名 Sambucus nigra) のエキスをサンブコール (sambucol)とよんで、習慣的にそのまま学術論文に記載したりすることもあります。ネギオールの場合、名前の根拠そのものが見つからなかったのでこれと同じケースかは不明ですが、こうした可能性もあろうかと想像できます。

以上のような理由から、ネギオールとよばれる、ネギの地上部の白い組織に多いとされる成分についての研究成果は、学会誌に投稿されていないか、または、多くの専門家の審査を経て掲載される状態になっていないように思われます。

矢崎 一史(京都大学生存圏研究所森林圏遺伝子統御分野)
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2010-04-12
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