一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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イチジクにオイルを注すとなぜ甘く変化するの

質問者:   自営業   孫の先生
登録番号2173   登録日:2010-04-11
秋イチジクの実が熟れずに木にあるのをサラダオイルを注すと、極甘になりました。孫たちはもっと早くに、オイルを注して、ジャムを作りたいと言います。可能でしょうか。又何故甘く変化するのでしょうか
孫の先生 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
イチジク果実に植物油を少量与えると、肥大と成熟が促進されることはたいへん古くから知られていることです。1947年に出版されたIra Judson Condit著の“The Fig”という書籍に、紀元前3世紀には、ギリシャの哲学者アリストテレスの弟子にあたる哲学者、博物学者テオフラテュスが、イチジク果実成熟促進の方法として目(果実先端の小さな孔の部分)にオリーブオイルを塗布することを記載していると書かれています。また、同書には紀元50年頃のイタリーでも同じような技術を使ってイチジク成熟促進を行っていたと記載されています。下って1831年には米国でもこの現象が確認されoleificationとよばれてその後多くの研究が行われるようになりました。日本でも1960年代に大阪府立大学の平井重三先生らが詳細な研究報告されています。それらによりますと、あまり若い果実に塗布することは逆効果ですが、果実重が35g前後、薄黄色に着色した頃(大阪では8月上旬)に植物油を浸した綿棒で目の部分に塗布すると急速に果実肥大がおこり、およそ一週間後には55g程度の熟した果実となると報告されています。オリーブオイル、菜種油など植物油は効果的ですが、鉱油や動物油は効果が小さいことが分かっています。その理由にはいろいろな解釈がありますが、植物油に含まれるオレイン酸が酸化分解してエチレンが生成され、エチレンの作用で肥大と成熟が促進される、というのが一般的理解とされています。ご承知でしょうが、エチレンは多くの果実の成熟(熟成)を促進するホルモンとされています。しかし、この油処理は最適の時期に手で局所的に塗布する必要があり、植物油を果実全体に散布することは逆効果があるため実用技術とはなっていません。熟れ残った秋のイチジクについての研究はありませんでしたので、効果があるとは知りませんでした。手数がかかりますが楽しんで油処理をなさってたくさんジャムを作ってください。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-04-12
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