一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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バナナ果皮の褐変

質問者:   自営業   鈴木
登録番号2176   登録日:2010-04-15
バナナの果皮の表皮細胞は、小さな外傷や低温損害等を受けると褐変するとのことですが、その発現機序について教えてください。
よろしくお願いします。
鈴木 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
バナナに限らずリンゴを切ったとき、緑色のソラマメ莢やタラヨウの葉に傷をつけたとき、傷の周辺が褐色から黒色に変化することはよく知られています。植物細胞の中にはポリフェノールといって酸化されやすい物質がたくさんあります。タンニン類、カテキン類、クロロゲン酸、コーヒー酸の他にアントシアニジン類、フラボン類などたくさんの種類がありますが、これらは細胞の中にある液胞とよばれる小さな袋の中に閉じこめられています。一方、細胞の働きに重要な酵素類は液胞の外側の原形質の中にあるので液胞内にある物質とは隔離されています。酵素の中にポリフェノール酸化酵素群(たくさんの種類がありますので群と言わせいただきます)があります。組織に傷をつけて細胞が壊れると液胞も壊れ、液胞内のポリフェノール類とポリフェノール酸化酵素群とが接触しますのでこの酵素群の働きでポリフェノール類が酸化され酸化物がいろいろな物質と結合したり重合したりして褐色〜黒色物質となります。細胞が低温傷害を受けると細胞の膜系を痛めますので液胞が壊れやすくなり、ついには壊れてポリフェノール類の酸化がおこります。バナナ果皮では黒変化に関与するポリフェノールとしてドーパミン、ロイコシアニジン、ロイコデルフィニジンがありいずれもポリフェノール酸化酵素群で酸化されます。ドーパミンやドーパというポリフェノールは酸化され重合すると黒色の重合物となることがしられています。ですから、ポリフェノール酸化酵素の働きを阻害するような処理をすると褐変化がおこりません。切ったリンゴを塩水で洗ったりすると着色しないのはそのためとされています。類似の質問が登録番号0999、登録番号1015にありますので参考になさってください。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-04-16
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