質問者:
会社員
トキワ
登録番号2179
登録日:2010-04-21
1年前ぐらいからはじめたサボテン栽培でより大きい株を作ろうと思ったことでみんなのひろば
植物(今回はサボテン)の近親交配
交配についていろいろ調べていたのですが調べ方が下手なのか
うまく良いサイトが見つかりませんでした。
そこで聞きたいことが
1.親株より大きい子株は交配から生まれるのはほぼありえないのか?数%?
2.交配で生まれた子株50〜100株から良い株を選抜して大きくて良い株同士交配した場合、兄弟株であるため近親交配ということで矮小化してしまう?
3.もし矮小化が起こるなら子の世代でなのか孫の世代でなのか更に先なのか?
(矮小化しないなら良い子株でずっと交配していきたいため)
自分がやりたいことは現存の株を何度もこれから先交配していき親株を抜く良い株を作り更にそれを超える孫株を作りというようなことをずっとしていきたいのです。
近親交配による矮小化がでる確率(理想は何世代も近親交配しても矮小化しないこと)が低いか高いか気になるのと矮小化するなら血縁の遠くて更に良い株をどんどん手にいれなければなりません・・・・
今から60年ぐらいかけて大変大きな株を作りたいです。
60年かけたところで植物的に改良ができないなら早めにこの計画を諦めたいです
トキワさま
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。下記のご質問ですが、その内容はサボテンに特有の問題ではありませんので、一般的な遺伝の問題として説明します。
まず近親交配のことですが、植物では近親交配は非常に一般的に起きています。自家受粉する場合はすべて近親交配ですし、同一個体の別の花同士の受粉でもそうです。また、親植物で作られた種子が発芽してできた個体の花と、親個体の花との間で受粉がおきても、近親交配といえるでしょう。近親交配において生まれる子孫が生存にとって不利であることが多いのは、ヘテロの状態で保存されている望ましくない遺伝子がホモの状態となって、実際に発現してしまうことが起こりうるからです(*)。生物は同一種であれば、どの個体もほとんど遺伝子組成は同じですが、ほんの一部だけ異なっています。ヒトではお互いに0.1%ほどの違いがあります。だからこそ、同じヒトはいないのです。近親交配を繰り返すということは生まれる子孫の個体の遺伝子組成がだんだん均一に近づいていくことを意味します。そのような状態になったものを純系とよんでいます。このことについてはかこの質問コーナーでとりあげられていますので、読んで下さい。(登録番号1619,登録番号2132など)
* 一個の遺伝子は染色体とよばれる構造の中にあるDNA 分子(鎖状の)のある決まった部分に相当しますが、細胞には同じ染色体が2本あるため、どの遺伝子も一対(一組)存在します。その一対が両方とも正常(良いという意味ではありません)であれば(A:A)、ホモであるといいます。しかし、片一方の遺伝子が変異を起こしていると、これはヘテロ(A:a)の状態にあるといいます。一般に変異を起こしている遺伝子があっても、もう一方が正常であれば、形質の発現は正常です。この場合正常発現する遺伝子(A)は優性であり、抑えられている方の遺伝子(a)は劣性(悪いという意味ではありません)であるといいます。劣性の性質が発現するには、一対の遺伝子が両方とも劣性(a:a)でなければなりません。そのような組み合わせはどういうときに起きるかというと、受精のときの精子や卵子の配偶子は、各染色体が一本づつにわかれますので(従って配偶子の染色体数はふつうの身体の細胞の半分になります)、劣性の遺伝子しかないものと(a)、優性の遺伝子しかないもの(A)とに分かれます。受精によって二つの配偶子が一緒になると、組み合わせは(A:A ; A:a ; a:a)であり、その比率は1:2:1となり、形質発現の上では3(優性):1(劣性)となります。これがいわゆるメンデるの分離の法則です。
そこで、ある植物の一つの個体の花と別の個体の花との間で交配させると、お互いがクローン植物(遺伝子組成が全く同じ)あるいはそれに近い純系でない限り、共通でない部分の遺伝子の混ざり合い(組み換え)によって、いろいろな形質も示す子孫もできることになります。花・葉の形、サイズ、色、背丈などなどの外部形態的ヴァリエーションだけでなく、含有物質の種類や量にも違いが出てきます。農作物や園芸植物は、遺伝子組み換えの技法によらない場合は、ふつう、交配によって生まれる多種多様の子孫の中から望ましい形質の個体を選抜し、それを更に交配を繰りかえして、より望ましいものへと改良していくのです。したがって、交配で大型の植物が得られたり、小型の植物が得られたりするのは、実際にやってみなければ分からないことです。また、何%がそうなるかということも決まったものではありません。もし、一回の交配で得られた種子から芽生えた個体の中に望ましい大型のものがなかったら、また、別も個体同士で試みてみるより他はないでしょう。過去の著名な園芸家等は何万、何十万と掛け合わせを行って、やっと望むものを作り出したこともあるのです。
背丈を決める遺伝子は単一ではないし、様々な条件でもことなります。仮に、子株から選抜した大型のもの同士を交配して、かえって背丈の低いものができる場合もありえます。たまたまヘテロの状態にあった背丈の矮小化に関係する遺伝子が、掛け合わせの結果ホモの状態になり、発現してしまうこともあるでしょう。しかし、近親交配が必ず望ましくない個体を生むとはいえません。むしろ園芸育種では近親交配によって望ましい(人にとって)形質を強めていくのがふつうです。
サボテンの巨大化交配プロジェクトがかかるか全く分かりません。やってみるより他はないでしょう。バーバンクはとげなしサボテンを作出するのに、何十万もの雑種をつくり、10年かけてやっと成功したようです。60年がんばれば成功するのではないでしょうか。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。下記のご質問ですが、その内容はサボテンに特有の問題ではありませんので、一般的な遺伝の問題として説明します。
まず近親交配のことですが、植物では近親交配は非常に一般的に起きています。自家受粉する場合はすべて近親交配ですし、同一個体の別の花同士の受粉でもそうです。また、親植物で作られた種子が発芽してできた個体の花と、親個体の花との間で受粉がおきても、近親交配といえるでしょう。近親交配において生まれる子孫が生存にとって不利であることが多いのは、ヘテロの状態で保存されている望ましくない遺伝子がホモの状態となって、実際に発現してしまうことが起こりうるからです(*)。生物は同一種であれば、どの個体もほとんど遺伝子組成は同じですが、ほんの一部だけ異なっています。ヒトではお互いに0.1%ほどの違いがあります。だからこそ、同じヒトはいないのです。近親交配を繰り返すということは生まれる子孫の個体の遺伝子組成がだんだん均一に近づいていくことを意味します。そのような状態になったものを純系とよんでいます。このことについてはかこの質問コーナーでとりあげられていますので、読んで下さい。(登録番号1619,登録番号2132など)
* 一個の遺伝子は染色体とよばれる構造の中にあるDNA 分子(鎖状の)のある決まった部分に相当しますが、細胞には同じ染色体が2本あるため、どの遺伝子も一対(一組)存在します。その一対が両方とも正常(良いという意味ではありません)であれば(A:A)、ホモであるといいます。しかし、片一方の遺伝子が変異を起こしていると、これはヘテロ(A:a)の状態にあるといいます。一般に変異を起こしている遺伝子があっても、もう一方が正常であれば、形質の発現は正常です。この場合正常発現する遺伝子(A)は優性であり、抑えられている方の遺伝子(a)は劣性(悪いという意味ではありません)であるといいます。劣性の性質が発現するには、一対の遺伝子が両方とも劣性(a:a)でなければなりません。そのような組み合わせはどういうときに起きるかというと、受精のときの精子や卵子の配偶子は、各染色体が一本づつにわかれますので(従って配偶子の染色体数はふつうの身体の細胞の半分になります)、劣性の遺伝子しかないものと(a)、優性の遺伝子しかないもの(A)とに分かれます。受精によって二つの配偶子が一緒になると、組み合わせは(A:A ; A:a ; a:a)であり、その比率は1:2:1となり、形質発現の上では3(優性):1(劣性)となります。これがいわゆるメンデるの分離の法則です。
そこで、ある植物の一つの個体の花と別の個体の花との間で交配させると、お互いがクローン植物(遺伝子組成が全く同じ)あるいはそれに近い純系でない限り、共通でない部分の遺伝子の混ざり合い(組み換え)によって、いろいろな形質も示す子孫もできることになります。花・葉の形、サイズ、色、背丈などなどの外部形態的ヴァリエーションだけでなく、含有物質の種類や量にも違いが出てきます。農作物や園芸植物は、遺伝子組み換えの技法によらない場合は、ふつう、交配によって生まれる多種多様の子孫の中から望ましい形質の個体を選抜し、それを更に交配を繰りかえして、より望ましいものへと改良していくのです。したがって、交配で大型の植物が得られたり、小型の植物が得られたりするのは、実際にやってみなければ分からないことです。また、何%がそうなるかということも決まったものではありません。もし、一回の交配で得られた種子から芽生えた個体の中に望ましい大型のものがなかったら、また、別も個体同士で試みてみるより他はないでしょう。過去の著名な園芸家等は何万、何十万と掛け合わせを行って、やっと望むものを作り出したこともあるのです。
背丈を決める遺伝子は単一ではないし、様々な条件でもことなります。仮に、子株から選抜した大型のもの同士を交配して、かえって背丈の低いものができる場合もありえます。たまたまヘテロの状態にあった背丈の矮小化に関係する遺伝子が、掛け合わせの結果ホモの状態になり、発現してしまうこともあるでしょう。しかし、近親交配が必ず望ましくない個体を生むとはいえません。むしろ園芸育種では近親交配によって望ましい(人にとって)形質を強めていくのがふつうです。
サボテンの巨大化交配プロジェクトがかかるか全く分かりません。やってみるより他はないでしょう。バーバンクはとげなしサボテンを作出するのに、何十万もの雑種をつくり、10年かけてやっと成功したようです。60年がんばれば成功するのではないでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2010-04-26
勝見 允行
回答日:2010-04-26