一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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玉ねぎのリン葉の細胞の大きさの差について

質問者:   大学生   みき
登録番号2182   登録日:2010-04-26
玉ねぎのリン葉は内側と外側で表皮細胞の大きさが異なるというのを以前何かで聞き気になっていたのですがよくわからないので質問しました。
玉ねぎのなかで、中心部と皮に近い部分の細胞の大きさが異なることの理由はわかるのですが…
みき様

みんなのひろばへのご質問有り難うございました。担当の柴岡ともうします。ご質問の対象としているタマネギは食用にしているタマネギのことと理解してお答えいたします。細胞の大きさに付いてお答えする前に食用にしているタマネギのタマ(鱗茎)がどのようにして出来るのかについて述べます。早生のタマネギはもうタマになって市場に出ていますが、晩生のタマネギはまだタマを作らない状態でいますので、近所に晩生のタマネギの畑があったら是非見て頂きたいのです。畑のタマネギを見たことのない人にはこれがタマネギかどうか判断がつきません。普通のネギと同じような形をしているからです。タマネギは秋から冬の日の短い(正確には夜の長い)季節には普通のネギと同じ形をしていますが、日が長くなる(正確には夜が短くなる)とタマを作りはじめます。日の短い間(短日条件下)、普通のネギの葉の付け根(葉鞘基部)の細胞と同じように細長く伸びていたタマネギの葉鞘基部の細胞が、日が長くなる(長日条件)と膨らんで出来るのです。また、この時期になると、新しく出来た葉の細胞もあらゆる方向に伸びるようになりタマができます。さて、このタマ作りには細胞分裂はほとんど含まれていません。表皮以外の細胞の体積増大によってタマは膨らむのです。表皮はどうかと云いますと、内側の表皮の細胞は分裂もしなければ細胞体積の増大も行いません。これに対して、表側の表皮の細胞だけは分裂を行います。これで、ご質問のタマネギのりん葉(鱗茎葉)の表皮の細胞の大きさが表側と内側で違う理由がお分かりになったと思います。ついでですが、内側の表皮の細胞が細胞体積増大も細胞分裂もしないのに、それに隣接している内側の細胞は体積増大をしますので、普通に考えると、内側の表皮は剥がれてしまう筈です。何故剥がれないかと言うと、それより内側にある鱗茎葉が膨らむことによって、実質的には剥がれてしまっている内側の表皮を、内部の組織に押し付けているので、辛うじてくっついているのです。内側の表皮を簡単に剥がすことができるのはそのためです。また、内側の表皮の細胞が大きいのは、押されて引き延ばされたからです。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2010-04-27
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