質問者:
一般
くりちゃん
登録番号2185
登録日:2010-04-30
この4-5年毎年不思議の思っていることがあります。みんなのひろば
ケヤキの不揃いな葉の出方
4-5月ケヤキの葉は、どうして一本の木の中で葉の出方に違いがあるのでしょうか。
南北の差、上下の差、日当たりによる差等では説明のできない出方をしています。
また聞いた話では、虫などに食害にあっても葉を出すのを時間差を持たせれば食害が少なくなって生き延びられる。あるいは根から水分の吸い上げによって差がでる。等の説明を受けますが、いま一つ合点がいきません。(否定する理由が多い)
他に何か本当の理由があるのでしょうか。
宜しくお願い致します。
くりちゃん様
ケヤキについてのしっかりした観察に基づいたご質問、ありがとうございました。頂いたご質問に対する回答を、樹木の生態に関しての研究をなさっておられる、東京大学付属日光植物園の舘野正樹先生にお願い致しましたところ、以下のような回答をお寄せ下さいました。ご参考になるに違いないと思います。舘野先生の回答の中にメカニズムは分からないとありましたので、素人ながら私がそのメカニズムについての仮説(妄想)のようなものをつけ加えました。あくまでも仮説(妄想)なので、そのつもりで読んで下さい。
舘野先生のご回答
ケヤキの展葉についてですが、栗山さんが観察されたとおり、枝ごとに展葉時期が少し違ってくるのが普通です。枝といっても一本一本の細い枝ごとに展葉時期が異なるわけではなく、主幹から枝分かれした太い枝単位(あるいはもう少し小さな単位の場合もありますが・・・)で展葉時期が違っているようです。
個人的には下部の枝の方が若干展葉が早いという傾向があるように思っていましたが、それもはっきりしたものではなく、むしろ展葉の早い枝がランダムに散らばっているという方が正しいのかもしれません。
多くの樹木では展葉時期が枝ごとに異なることはなく、ほぼ一斉にすべての枝で展葉が始まります。枝ごとに展葉時期が異なるのはケヤキ特有の現象のように思います。
このメカニズムと適応の意義についてはまったくわからないというのが実情だと思います。栗山さんが聞いたという説明は、おそらく誰かが苦し紛れにおこなったもののように思います。
まず、展葉を水が制限しているということは知られていないと思います。大きな樹木でも水は全体にほぼ均等に供給できるようなしくみがあるようです。まだ出版はされていないのですが、本郷の植物学教室の種子田春彦さんが解析しています。ですから、枝ごとに水の供給量が異なるため、水がやってこない枝では展葉できないということはなさそうです。
おそらく展葉は温度依存的な化学反応で進行するように思います。そうならば、日当たりの良い枝ほど早いようにも思うのですが、そうでないとすると、単純な化学反応というわけでもなさそうですね。私はメカニズムについて完全にお手上げ状態です。
適応的な意義についてですが、虫に対しての保険というのはあまり考えられないように思います。それならば他の樹種でも同じようにばらばらに展葉するような進化がおきるはずです。また、一斉に展葉したほうが虫を飽食させることができるため、食われないですむ葉が多くなるようにも考えられます。
となると、実はこの現象に適応的な意義はなく、単にばらばらな展葉でもそれほどマイナスにならないので、このような性質が残っているということなのかもしれません。中立的な進化ということでしょうか。
あまりお役にたてず、申し訳ありませんが、日光で観察された現象について最後に書いておきたいと思います。
数年前、5月に入ってから寒波がやってきて、早く展葉した葉が霜害で枯死するということがありました。このとき遅く展葉した葉生き残りました。葉が枯死した枝でも6月頃には休眠芽から展葉がおきたのですが、例年と比べると葉の少ない時期が見られたのでした。もしかすると、このような霜害に対する保険ということもあるのかもしれません。
とはいえ、日光にある他の落葉樹では見られない現象なので、これもあまり一般性があることとは思えませんね。
舘野 正樹(東京大学付属日光植物園)
メカニズムについての柴岡の仮説(妄想)
ケヤキの芽立ちについて全く知らないのですが、メカニズムについて妄想をたくましくしてみました。春に伸展する芽は秋に形成され休眠に入ります。休眠状態では気温が高くなっても葉を開かすことはありません。葉が開くためには休眠が打破されなければなりません。樹木の休眠芽の休眠打破にはある程度以上の長さの低温が必要とされています。そのため、春になるまで、たとえ一時的に気温が高くなっても、葉を開くことがないのです。休眠芽での研究はありませんが、種子の休眠については詳しく研究がされており、種子では種子ごとに休眠の深さに違いがあることが知られています。ということで、もしケヤキの休眠芽の休眠の深さが休眠芽ごとに違うとすると、くりちゃんが観察なさった現象が説明出来るのではないかと考えました。休眠の深さを数値で現すことが出来ると、この妄想の是非がチェックできるのではないかと思います。
ケヤキについてのしっかりした観察に基づいたご質問、ありがとうございました。頂いたご質問に対する回答を、樹木の生態に関しての研究をなさっておられる、東京大学付属日光植物園の舘野正樹先生にお願い致しましたところ、以下のような回答をお寄せ下さいました。ご参考になるに違いないと思います。舘野先生の回答の中にメカニズムは分からないとありましたので、素人ながら私がそのメカニズムについての仮説(妄想)のようなものをつけ加えました。あくまでも仮説(妄想)なので、そのつもりで読んで下さい。
舘野先生のご回答
ケヤキの展葉についてですが、栗山さんが観察されたとおり、枝ごとに展葉時期が少し違ってくるのが普通です。枝といっても一本一本の細い枝ごとに展葉時期が異なるわけではなく、主幹から枝分かれした太い枝単位(あるいはもう少し小さな単位の場合もありますが・・・)で展葉時期が違っているようです。
個人的には下部の枝の方が若干展葉が早いという傾向があるように思っていましたが、それもはっきりしたものではなく、むしろ展葉の早い枝がランダムに散らばっているという方が正しいのかもしれません。
多くの樹木では展葉時期が枝ごとに異なることはなく、ほぼ一斉にすべての枝で展葉が始まります。枝ごとに展葉時期が異なるのはケヤキ特有の現象のように思います。
このメカニズムと適応の意義についてはまったくわからないというのが実情だと思います。栗山さんが聞いたという説明は、おそらく誰かが苦し紛れにおこなったもののように思います。
まず、展葉を水が制限しているということは知られていないと思います。大きな樹木でも水は全体にほぼ均等に供給できるようなしくみがあるようです。まだ出版はされていないのですが、本郷の植物学教室の種子田春彦さんが解析しています。ですから、枝ごとに水の供給量が異なるため、水がやってこない枝では展葉できないということはなさそうです。
おそらく展葉は温度依存的な化学反応で進行するように思います。そうならば、日当たりの良い枝ほど早いようにも思うのですが、そうでないとすると、単純な化学反応というわけでもなさそうですね。私はメカニズムについて完全にお手上げ状態です。
適応的な意義についてですが、虫に対しての保険というのはあまり考えられないように思います。それならば他の樹種でも同じようにばらばらに展葉するような進化がおきるはずです。また、一斉に展葉したほうが虫を飽食させることができるため、食われないですむ葉が多くなるようにも考えられます。
となると、実はこの現象に適応的な意義はなく、単にばらばらな展葉でもそれほどマイナスにならないので、このような性質が残っているということなのかもしれません。中立的な進化ということでしょうか。
あまりお役にたてず、申し訳ありませんが、日光で観察された現象について最後に書いておきたいと思います。
数年前、5月に入ってから寒波がやってきて、早く展葉した葉が霜害で枯死するということがありました。このとき遅く展葉した葉生き残りました。葉が枯死した枝でも6月頃には休眠芽から展葉がおきたのですが、例年と比べると葉の少ない時期が見られたのでした。もしかすると、このような霜害に対する保険ということもあるのかもしれません。
とはいえ、日光にある他の落葉樹では見られない現象なので、これもあまり一般性があることとは思えませんね。
舘野 正樹(東京大学付属日光植物園)
メカニズムについての柴岡の仮説(妄想)
ケヤキの芽立ちについて全く知らないのですが、メカニズムについて妄想をたくましくしてみました。春に伸展する芽は秋に形成され休眠に入ります。休眠状態では気温が高くなっても葉を開かすことはありません。葉が開くためには休眠が打破されなければなりません。樹木の休眠芽の休眠打破にはある程度以上の長さの低温が必要とされています。そのため、春になるまで、たとえ一時的に気温が高くなっても、葉を開くことがないのです。休眠芽での研究はありませんが、種子の休眠については詳しく研究がされており、種子では種子ごとに休眠の深さに違いがあることが知られています。ということで、もしケヤキの休眠芽の休眠の深さが休眠芽ごとに違うとすると、くりちゃんが観察なさった現象が説明出来るのではないかと考えました。休眠の深さを数値で現すことが出来ると、この妄想の是非がチェックできるのではないかと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2010-05-06
柴岡 弘郎
回答日:2010-05-06