植物Q&A

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サツキ・ヒラドツツジの咲き分けについて

質問者:   教員   さざんか
登録番号2186   登録日:2010-04-30
サツキの同じ株で赤い花や白い花、白地に赤の斑入りのものなどの花の咲く「咲き分け」を見かけます。これは、遺伝的にどうなっているのでしょうか。花芽が形成されたときに、アントシアニンを作る遺伝子が働く細胞と、そうでない細胞がそれぞれ分化していくのでしょうか?
また、本日生徒が校庭に咲くヒラドツツジのうちで一株、ほとんどが白い花が咲いているのですが、わずかに一輪だけ、花弁の左右がほぼ赤と白に染め分けられているのを見つけました。よく探すとその株のみ、白地に赤い斑入りのものが3輪ほど見つかりました。私はヒラドで咲き分けを始めてみました。
ともあれ、これらの咲き分けの遺伝的な説明をお願いします。挿し木で増やしたにもかかわらずどうやってそういうことがおきるのでしょうか。ヒラドの写真はとっているので必要あればお送りします。よろしくお願いします。発見した生徒も知りたがっています。
さざんか様

咲き分けについてのご質問、ありがとうございます。回答が遅くなり申し訳ありませんでした。このような現象に気づき、興味をもたれるという事は、深く物事を考えられているという事だと思います。ツツジの色素はアントシアニンに分類される色素です。花の専門家の方々(サントリー株式会社で青いバラを開発された田中良和博士、アサガオの咲き分けの原因を発見された基礎生物学研究所の飯田滋博士、アサガオの様々な変異体の研究をされている九州大学の仁田坂英二博士、ツツジの花色や色素発現を御専門にしておられる九州大学の宮島郁夫博士、ツツジの花色発現に関する分子機構について研究をしておられる島根大学生物資源科学部の小林伸雄博士)に、どこまでわかっているのかについて聞いてみました。結論を申しますと、白い花を咲かせるツツジに赤い花が出現したり、白い花の一部が赤になる原因は、トランスポゾンが関与している可能性が高いということですが、そのことを証明した人はおりません。アサガオでは、トランスポゾンが原因となっている咲き分けが証明されています。ホームページ( http://mg.biology.kyushu-u.ac.... )をご覧ください。トランスポゾンによる咲き分けは、みんなのひろばでも何回か取りあげられており、登録番号0235、 登録番号0727、登録番号0941なども読んでみて下さい。
 トランスポゾンとは、1940年、バーバラ マクリントックがトウモロコシにおいて存在を予言した、染色体の中を動く遺伝子です。1940年といえば、DNAすら知られていなかった時代です。その経緯は、動く遺伝子―トウモロコシとノーベル賞(晶文社)などに書かれています。トランスポゾンにはDNA型、RNA型があり、そのどちらにも様々な種類がありますが、ここではDNA型のトランスポゾンについてお話しします。トランスポゾンは、特別な配列を持つDNAで、動物にも植物にも存在し、DNAにランダムに入り込み、また飛び出してはDNAの別のところに組み込まれます。トランスポゾンが遺伝子に組み込まれると、勿論、その遺伝子は機能を失います。ただ、多くの植物は2倍体ですので、2つの対立遺伝子の両方にトランスポゾンが挿入された場合にのみ、完全にその遺伝子が働かなくなります。生殖細胞を作る細胞において、アントシアニンを合成する酵素の遺伝子にトランスポゾンが挿入され、さらに、その後、受粉によりトランスポゾンが入った遺伝子がホモ接合体になりますと、白い花を咲かせる花ができます。このような花において、色素合成酵素遺伝子からトランスポゾンが抜けてどこかに動きますと、色素合成酵素遺伝子の機能が復活します。花を作る時期にトランスポゾンが抜けますと、その細胞が分裂して増えた細胞群はすべて色素を合成します。これにより、色がついたセクターができるのです。大きなセクターは、花の発生の早い時期、小さな斑点のようなセクターは花の発生の後のほうでトランスポゾンが抜けた為におこるのです。園芸家はこのような系統を維持しているのです。色素合成酵素遺伝子にトランスポゾンが挿入されていることはアサガオにおいては証明されていますが、ツツジでは未だ証明されていないのです。
 トランスポゾンは、ヒトにも、誰にでも沢山存在していて、遺伝子を破壊して遺伝病を引き起こす事もあります。また、トランスポゾンは、ある種のウイルスとも似ています。レトロウイルスは感染細胞内でDNAになって染色体に組み込まれます。ウイルスは、細胞外に出て感染するが、トランスポゾンは細胞からは出て行かないという違いがあります。トランスポゾンに関しては多くの解説書がありますので、勉強してみて下さい。
日本植物生理学会 広報委員長
柿本 辰男
回答日:2010-05-23