一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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春の楓 一本だけ赤い、なぜ?

質問者:   小学生   きっちゃん
登録番号2188   登録日:2010-05-04
先日、兵庫県篠山市のキャンプ場にバーベキューに行ったときのことです。場内の楓の木の中で一本だけ真っ赤に色づいている木がありました。同じ斜面の、2メートル横の楓は、鮮やかな緑色でした。日当たりや気温、水の量に差がないと思われます。しかも5月だというのに・・・一本だけなぜ真っ赤に色づいていたのか、何が原因と考えられるでしょうか?
きっちゃん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
同じ「カエデ」なのに不思議に思うことですね。現物を見ないとお答えするのが難しいのですが、幾つかありそうなことを考えてみます。第1に考えられるのは多くのカエデの新芽は赤く、展開するにつれて緑色になります。緑色になる速さはいろいろで、かなり葉が開いてもまだ赤いままのものもあります。「しかも5月だというのに」と書かれていますので野生のカエデ類にしては5月まで赤く残ることは少ないと思いますが、今年の春の気象はかなり異常でしたので種(シュ)、個体の性質によっては展開が遅く、赤みが残っていたことも考えられます。第2に考えられることはキャンプ場などではカエデを植えた可能性があります。カエデにはたくさんの園芸品種があり、たとえばイロハカエデ(新芽は赤ですが葉が展開すると緑色になります)にもいくつかの園芸品種があって、葉が展開しても赤い品種があります。同じようなことはオオモミジやヤマモミジにもあり、これらの品種が移植された可能性があります。つまり、同じ種(シュ)でも違う品種(園芸品種)が植えられていたのかも知れません。第3に同じ種でも個体によって、また個体の部分によってその性質は少しずつ違うことが普通です。紅葉は秋だけにおこるものではなく、環境が変わると紅葉(アントシアニンの合成がおこる)することがしばしば見られます。ですから紅葉しない個体、紅葉した個体が混ざったり、1本の木で紅葉している葉と緑色の葉が混ざっていたり、1枚の葉でも部分的に紅葉したりすることがよく見られます。これは、1本1本の木の生育状態や個性、1枚1枚の葉の位置や生育状態が少しずつ違うためや、1本の木でも場所によって気象条件が違う(微気象といって、枝部つく右の葉と左の葉は必ずしもまったく同じ気象条件、環境条件とはかぎりません)ためにおこることです。同じに見える斜面でも、木や草の生え具合、混み具合で光のあたり方、土壌中の水の量、気温、風量などが場所によって違って来るものです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-05-06
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