一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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タモ材とニレ材の見分け方について

質問者:   公務員   PON
登録番号2203   登録日:2010-05-24
北海道で林業の仕事をしていますが、最近木材関係で疑問に思う事があります。

環孔材のハルニレとタモは植物状の外見の区別は簡単ですが、木材とすると非常に区別が付きにくく、一部ではニレ材を「赤ダモ」材と呼ぶ所もあります。

今までは木目で「なんとなく」判断していましたが、例えばルーペ等を使用して判別する場合、どのような点に注意して区別すれば良いのかご教授頂けたら幸いです。
PONさま

「みんなのひろば」をご利用頂き、ありがとうございます。京都大学生存圏研究所の馬場啓一先生に聞きましたところ、大変興味深い回答をくださいました。

柿本 辰男(日本植物生理学会 広報委員長)

回答文
質問者の方がおっしゃる通り、ニレもタモも環孔材といって、各年の年輪初頭に大径の道管が1〜3列で並ぶ形態をしています。大径道管の並ぶ部分を孔圏、それ以外の部分を孔圏外と呼びます。環孔材の場合、孔圏外に樹種の特徴が現れることが良くあります。ニレ材とタモ材もこの孔圏外の木部を比較することで識別できます。比較する最善の方法は木材の 木口面を観察することです。まず木口面を刃こぼれの無い鋭利な刃物(新しいカッターの刃など)で削ってきれいな切削面を出します。きれいな切削面でなければ組織観察はうまくいきません。こうして削り出したきれいな木口の切削面をルーペで観察すると、孔圏外には白い点のように見える小径道管があるのがわかり ます。ニレではこの小径道管が3〜4個くっついて列を作って連なっており、円周方向と浅い角度をもった斜めの白っぽい帯として観察されます。小径道管の白っぽい帯は1年輪内の孔圏外で3〜4列前後観察されます。一方、タモの小径道管は単独で存在しており、白い点々はそれぞれ単独で孔圏外に散在するように 観察されます。肉眼でもニレの小径道管の列は指の指紋のように模様として見えますが、タモでは指紋のような模様が孔圏外には見えることはありません。この他に放射組織の幅にも違いがあります。放射組織は年輪と直行する方向に少し明るい筋として観察されます。ニレとタモを比べるとニレの方がタモより太いのが わかります。環孔材に限らず、散孔材や放射孔材でも、板目や柾目では違いのわかりにくい材がよくあります。こういう材も木口のルーペ観察で違いがはっきりすることがよくありますので試してみてください。
京都大学生存圏研究所
馬場 啓一
回答日:2010-06-01
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