質問者:
高校生
もっちゃん
登録番号2210
登録日:2010-05-28
植物は中心体がないので、星状体もないのに、細胞分裂の際、どのようにして細胞分裂について
防錘糸が伸びるのでしょうか?
もっちゃん様
みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。もっちゃんの抱いた疑問は昔から多くの研究者も抱いてきた疑問で、その疑問を解くための研究もいろいろと行われてきました。残念ながらこの疑問が完全に解けたとは云えない状況ですが、どんなことが分かって来たかについて述べようと思います。そのような話をするためには、高校では習わなかったのではないかと思われる言葉を使わなければならないので、まず、そうした言葉について説明いたします。紡錘糸という言葉は高校の教科書にも出ているようですが、この紡錘糸の本体はタンパク質で出来た細い(径25ナノメーター)管で、微小管と呼ばれています。微小管は2種類の球形のタンパク質(アルファーチューブリンとベーターチューブリン)が規則正しく集まって出来ています。また、球形のタンパク質が集まって、微小管を作る過程を重合と云います。次に、中心体ですが、これは形のはっきりしている2個の中心子と、それを取り囲む、形のはっきりしない部分(中心子周辺部分)からなっており、この中心子周辺部分に微小管を重合させる働きがあり、動物細胞ではこの中心子周辺部分から微小管が伸びています。紡錘体という名前は、動物細胞の細胞分裂装置が紡錘形をしているからつけられた名前です。植物細胞の細胞分裂装置も紡錘体と呼ばれていますが、植物細胞の紡錘体は紡錘形をしていません。樽(日本酒の樽でなくウイスキーの樽を思い浮かべて下さい)のような形をしています。動物細胞の中心子周辺部分にあるタンパク質を染める方法で、植物細胞の樽型の分裂装置の両極(樽の上面と下面)の近くが幅広く染まることから、中心子周辺部分にあるのと同じタンパク質が、植物の分裂装置の両極に存在することが分かり、中心体を持たない植物細胞でも、中心体を持つ動物細胞と同じ機構で微小管が重合されているのではないかと考えられていましたが、その考えが正しいことが分かってきました。微小管のタンパク質であるチューブリンととても良く似たタンパク質(ガンマーチューブリン)が見つかり、これが中心子周辺部分に存在し、微小管の重合に働いていることが分かりました。植物でも緑藻では中心体がありますが、ガンマーチューブリンはここにもあります。高等植物ではガンマーチュブリンは核や葉緑体の周り、小胞体膜などに分布していますが、分裂中の細胞では樽型の紡錘体の両極に幅広く分布しています。植物細胞でも、ガンマーチューブリンの働きで紡錘体の微小管は作られるのです。両極にあるガンマーチューブリンから染色体に伸びた微小管により、染色体は両極に引き寄せられるのですから、ガンマーチューブリンは動かないように何かと結合していなければなりません。何に結合しているのかなど、これから明らかにしていかなければならにことは沢山残っています。
みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。もっちゃんの抱いた疑問は昔から多くの研究者も抱いてきた疑問で、その疑問を解くための研究もいろいろと行われてきました。残念ながらこの疑問が完全に解けたとは云えない状況ですが、どんなことが分かって来たかについて述べようと思います。そのような話をするためには、高校では習わなかったのではないかと思われる言葉を使わなければならないので、まず、そうした言葉について説明いたします。紡錘糸という言葉は高校の教科書にも出ているようですが、この紡錘糸の本体はタンパク質で出来た細い(径25ナノメーター)管で、微小管と呼ばれています。微小管は2種類の球形のタンパク質(アルファーチューブリンとベーターチューブリン)が規則正しく集まって出来ています。また、球形のタンパク質が集まって、微小管を作る過程を重合と云います。次に、中心体ですが、これは形のはっきりしている2個の中心子と、それを取り囲む、形のはっきりしない部分(中心子周辺部分)からなっており、この中心子周辺部分に微小管を重合させる働きがあり、動物細胞ではこの中心子周辺部分から微小管が伸びています。紡錘体という名前は、動物細胞の細胞分裂装置が紡錘形をしているからつけられた名前です。植物細胞の細胞分裂装置も紡錘体と呼ばれていますが、植物細胞の紡錘体は紡錘形をしていません。樽(日本酒の樽でなくウイスキーの樽を思い浮かべて下さい)のような形をしています。動物細胞の中心子周辺部分にあるタンパク質を染める方法で、植物細胞の樽型の分裂装置の両極(樽の上面と下面)の近くが幅広く染まることから、中心子周辺部分にあるのと同じタンパク質が、植物の分裂装置の両極に存在することが分かり、中心体を持たない植物細胞でも、中心体を持つ動物細胞と同じ機構で微小管が重合されているのではないかと考えられていましたが、その考えが正しいことが分かってきました。微小管のタンパク質であるチューブリンととても良く似たタンパク質(ガンマーチューブリン)が見つかり、これが中心子周辺部分に存在し、微小管の重合に働いていることが分かりました。植物でも緑藻では中心体がありますが、ガンマーチューブリンはここにもあります。高等植物ではガンマーチュブリンは核や葉緑体の周り、小胞体膜などに分布していますが、分裂中の細胞では樽型の紡錘体の両極に幅広く分布しています。植物細胞でも、ガンマーチューブリンの働きで紡錘体の微小管は作られるのです。両極にあるガンマーチューブリンから染色体に伸びた微小管により、染色体は両極に引き寄せられるのですから、ガンマーチューブリンは動かないように何かと結合していなければなりません。何に結合しているのかなど、これから明らかにしていかなければならにことは沢山残っています。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2010-06-02
柴岡 弘郎
回答日:2010-06-02