一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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遺伝を教える教材

質問者:   教員   ラビット
登録番号2211   登録日:2010-05-29
交配結果が3:1で現れる、中学生でも扱いやすい植物教材はありますか?

①すでに身や種になっているものを調べると3対1になっているようなもの
②自分たちで継続して栽培し、実や花などが3対1になって現れるもの
ラビット様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。メンデルの遺伝の法則を実験で生徒にやらせるのは、時間のかかる材料ではなかなか大変ですね。遺伝に限らず植物のいろいろな実験の材料としては短命のライフサイクルを持つ植物が望ましいのです。研究ではシロイヌナズナ(アラビドプシス)が世界的にひろく使われており、さまざまな変異体がつくられて、利用されています。そのなかでもちろん遺伝の法則の実験に使えるものもありますが、一般には販売されていませんので、研究者に分譲してもらうことが必要になります。また、摂氏25度を超えますと、成長が悪くなりますので、涼しい時期に栽培する必要があること、花が小さいですので、実体顕微鏡やルーペを用いて掛け合わせをする必要があることなどの難しさはあります。つまり、中学、高校での教材にするにはそれなりの苦労を覚悟しないといけません。
しかし、学校の教材として「ファストプランツ」というブランドで各種のアブラナ科の植物の種が販売されており、日本でも代理店があって種の入手はできるようです。日本の学校でも既に使用されており、その例が生物教育学会等で発表されています。
インターネットで「ファストプランツ」を検索してみて下さい。様々な情報が入手できます。



勝見様、

こんばんは。質問コーナーに投稿したラビットです。
ご親切に、丁寧に、そしてこんなに早く対応していただき感激しました。
さっそく調べてみましたが、非常に有効な情報をいただくことができました。
ありがとうございます。値段も思ったほど高くはなく、学校予算でも何とかなるかもしれません。交渉してみます。
今回、学年の先生と相談してピーターコーンを買ってきて、その粒を数えて色分けする(黄:白=3:1になっている)授業をするのですが「このケースは胚乳だから、メンデルとは違う」という指摘を受けました。
よく意味がわからなかったのですが、おわかりでしたらご教示ください。
よろしくお願いします。



ラビット様

実験材料がうまく入手できそうでよかったですね。ところでピーターコーンのことですが、色は胚乳の色を反映しています。胚乳は被子植物における重複受精の結果、普通の2n核を持つ体細胞とは異なり、3nの核を持つ事になります。重複受精の事は高校の生物の教科書などをご覧になってください。また、本コーナーの回答登録番号0491, 登録番号1791なども読んで下さい。たとえば、純系の黄色(A)の胚乳のコーン(優性)の花粉をに白色(a)の胚乳のコーン(劣性)の雌しべに受粉して、交雑体をつくると、F1の胚乳の遺伝子型はaaAで黄色になります。優性遺伝子が一つでもその表現型になります。そこで、このF1の胚の遺伝子型はAa ですから、これから育った植物体の花では、花粉内の精核はAあるいはa, 胚のうの中心細胞(極核)はAAあるいはaaがそれぞれ1:1でできます。従って、A ; a とAA ; aa の組み合わせはAAA ; AAa ; Aaa ; aaa となり、表現型は3:1を示す事になります。ここまで生徒に説明するのであれば、教材としても良いのではないでしょうか。ただ、メンデルは胚乳の遺伝子型の研究はしていなかったと思いますので、厳密にはメンデルの法則と言ってはいけないのかもしれませんね。単純に遺伝の法則、ということなら間違いありません。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-08-25
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