一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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連作障害についてのいくつかの疑問

質問者:   一般   サクラン坊
登録番号2214   登録日:2010-06-03
もうすぐ80歳、でも気分は小学生日々溢れる疑問に取り組んでいます。
御忙しい所恐縮ですが下記宜しくお願いします。

①水田耕作の稲には連作障害が出ないと書物にありました。と言う事は陸稲は
 連作ができないのでしょうか

②麦の場合は、どうなのでしょうか(ナイルの氾濫地での耕作は水田効果に
 似た効果があって毎年同じものが耕作できたのでしょうか)

③稲の祖と言われる野生イネにも連作障害があったのでしょうか。
 (栽培化の過程で、デメリットとして出てきたのでしょうか)

④さとうきび・綿花・バナナには連作障害はないのでしょうか

⑤連作障害は、一年生草本のみに起こるのでしょうか

                              以上
 
サクラン坊 さん

このコーナーに質問をお寄せ下さり有り難うございました。回答を差上げるのが遅くなって申し訳ありません。
この質問には九州沖縄農業研究センター広報普及室長の橋本知義博士が、より専門に近いお立場から回答文を用意して下さいましたのでご参考にして下さい。 



(橋本博士からの回答)
連作障害という言葉は、いろいろな場面で使われています。ここでは、同じ作物を連続して栽培する、すなわち連作により土壌環境が変化したために、作物の生育不良や収量低減、病害発生が確認される現象を想定し、以下の通り回答させていただきます。

土壌環境は理化学性と生物性に分けることができますので、連作障害の要因を大きく分けると、(1)作物が土壌中の特定の養分を吸収したり、根から特定の物質を出したりすることにより土壌養分バランスが変化すること、あるいは、(2)植物体、特に根のまわりの生物相(根圏微生物相といいます)が偏ることに起因して病害が発生することが考えられます。

水田は湛水と落水により土壌環境(理化学性や生物性)が大きく変化するので、土壌養分あるいは根圏微生物相が一定方向に偏ったままとなることがありません。水田は安定した土壌環境を維持することができますので、ご指摘の通り、水田で毎年水稲を栽培しても連作障害は発生しません。一方、陸稲の場合、偏った土壌環境を修復する湛水処理がないために、連作障害が発生すると考えられています。

麦類の場合も同様です。通常の場合、連作に伴い収量低減、病害の発生が目立つようになります。ナイルの事例に関する情報はありませんが、氾濫により土壌環境が大きく攪乱されるのであれば(毎年新たな土砂が圃場に流入してくるのであれば)、連作障害が発生しないことも十分期待できます。

野生イネに関する情報はありませんが、いわゆる野草(雑草)にも連作障害的現象があるようですので、畑条件での栽培であれば野生イネも連作障害が発生するかも知れません。さとうきびを詳細に観察すると、連作に伴う収量や病害への影響が観察されます。ただし、通常の場合、経済的損失を引き起こす程度の収量への影響等が認められないので、さとうきびには連作障害がないといわれることが多いようです。綿花やバナナに関する情報はありません。 

上述したとおり、一年生草本に限らず、一般的な畑条件で同じ作物を連作する限り、影響の程度はともかくも連作障害的現象は発生していると考えられます。

橋本 知義(九州沖縄農業研究センター)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2010-06-21
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