一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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厚壁細胞と厚角細胞の違い

質問者:   会社員   下北沢
登録番号2216   登録日:2010-06-06
毎晩「キャンベル生物学」を数ページ読んでいる50歳の元生物学徒です。807ページに、厚壁細胞と厚角細胞が書かれていますが、違いが分かりません。英語表記とともに、違いを教えて下さい。
下北沢様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。分厚い生物学の教科書を読んでおられるとのこと、生物学への学習心を持ち続けておられるのは素晴らしいことです。ところで、以下のご質問ですが、私の手元にあるキャンベルの原書(Campbell,Reece,Mitchell 5th Ed) を見てみましたが、どこが不明なのか分かりません。本の末尾にそれぞれの専門用語の簡潔な解説がのっているはずです。訳書を読んでみないと何ともいえないのかもしれませんが、ともかく、ここで、両者の違いを私なりの言葉で説明いたします。

厚壁細胞(sclerenchymatous cells):細胞壁の全面が肥厚した細胞で、細胞壁には一般にリグニン化(木化)がみられる。多くの場合、成熟した厚壁細胞は原形質を失ってしまう。この点は厚角細胞と異なる。厚壁細胞は集まって厚壁組織(sclerenchyma: ギリシャ語のsclerous →固い;encyma→注入物)を構成するが、これは植物体の機械的な支持に役立っている。形はいろいろあるが、大別して比較的長い繊維 (fiber)と比較的短い厚壁異型細胞(sclereids)がある。繊維細胞では細胞壁に孔(pit)が見られる事が多い。厚壁異型細胞のよく知られた例は石細胞。

厚角細胞(collenchymatous cells):厚角組織(collenchyma: ギリシャ語の colla→のり)を構成する細胞で, 一次細胞壁が肥厚しているが、リグニン化は起きていない。柔組織の細胞のように水分を多く含んだ生きている細胞。厚角細胞は柔軟性と可塑性を兼ね備えた細胞で、かなりの伸長力がある。細胞壁の厚くなっている部分は均一でない。一般に細胞同士が接着する隅の角の箇所で厚壁が見られるため、厚角細胞とと呼ばれる。厚角組織は特に若い成長中の茎、葉、花官などの器官にみられる典型的な支持組織である。根でも光が当たると皮層組織に生じることがある。単子葉植物では一般に欠如している。代わりに厚壁組織が存在する。

生物学の教科書を読まれるときは、できたら、生物学辞典(岩波書店等)をお求めになり、利用されることをおすすめいたします。たいていの用語は載っています。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2010-06-07
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