一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

レタスがアオムシなどを遠ざける理由

質問者:   高校生   Y田
登録番号2218   登録日:2010-06-13
私の高校では、学校の授業の一環として「卒業研究」という科目があります。自分が興味のある事柄について実験・研究を行っていく上で、私は自然農薬を用いた野菜栽培を研究してみることにしました。文献研究の途中、レタスとキャベツを混植するとアオムシやヨトウムシが寄り付かなくなると知りました。
 そこで、私はレタスをエキスとして抽出し、それを散布して植物を栽培すれば、混植の必要なしにアオムシやヨトウムシを防除できるのではないかと考え、現在実験の準備に取り掛かっています。
 しかし、何故レタスがアオムシやヨトウムシを遠ざけることができるのか仕組みがわかりません。何かレタスに含まれる成分が関係しているのでしょうか?その成分が水溶性なのかどうかによって、エキスにする方法も変わってくると思うので、詳しく教えてください。よろしくお願いします。
Y田 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
違った種類の蔬菜類をお互いに近接させて植え付ける混植という栽培法が近年はしばしば話題となっています。もともと在来の蔬菜類の栽培は比較的小さな畑に多くの種類を栽培する混植からはじまっています。どのような作物を混食するかは農民の長い経験から得られた知恵として蓄積されてきました。混食することでお互いの生育が良くなるもの、病虫害にかからなくなるもの、中には混食すると不利になる組み合わせまでが経験的に知られてきました。ハーブなどのように香気成分を放散する植物は病害虫が忌避する傾向がありますし、マリゴールドなどは根から土壌中の線虫を殺す成分を分泌するので多くの作物との混植に高い効果があることで知られています。また、菌根菌の繁殖を助けたり、微量要素を供給したりするため、作物の生育促進をおこす場合もあります。しかし、多くの場合混植の効果の原因は突き止められていません。お訊ねのレタスとキャベツの組み合わせですが、かなり微妙なものです。キャベツ類にはアオムシ、コナガなどが問題となりますが、これらを忌避する効果のある混植植物として、ニオイゼラニウム、オレガノ(ハナハッカ)、タイム、ローズマリー、セージ、ニガヨモギ、ヤナギハッカなどが挙げられております。これらの強い香気成分が害虫の摂食行動を攪乱するためと考えられています。レタスをニンジンと混植することでニンジンの害虫キャロットルートフライを防ぐ働きがあるとの記載はありましたが、キャベツ類に除虫防虫効果があると記載されているものは見つかりませんでした。「文献研究の途中、レタスとキャベツを混植するとアオムシやヨトウムシが寄り付かなくなると知りました」とありますが、どのような文献だったのでしょうか。私には見つけることができませんでした。レタスには苦み成分がありますので、アオムシなどが好まないことは十分予想されます。しかし、苦みの成分であるラクチュコピクリンやラクチュシン(どちらも水溶性です)には抗マラリア効果があるとの記載がありますが、昆虫の摂食阻害効果、忌避効果、除虫効果があるとの記載は見つかりませんでした。でも文献記載があるということは、誰かが調べたら効果があったことを意味していますので、自由研究としてきちんと調べ直す価値はあると思います。レタスのエキスを調べることも大事ですが、キャベツとレタスを混植したときに本当にキャベツの被害が少ないことを確認することは大事なことと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-06-16