一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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おくらの茎と毛

質問者:   教員   ミッキー
登録番号2223   登録日:2010-06-22
現在、都内の小学校で3年の担任をしております。

国語の単元で、観察して不思議に思ったことを調べ、まとめようというのがあります。子供から出てきた疑問が、図鑑等ではなかなか調べられずにいるため、質問させていただきました。

①オクラの茎は下のほうが赤くなっているのはなぜか。
②オクラの実にはなぜ毛のようなものがあるのか。
 (毛は茎や葉にもあります。ホウセンカにはないので、そう思ったようです。) 

どうぞよろしくお願いいたします。
ミッキーさま

オクラの果実は野菜としてよく利用されるようになってきましたが、日本では緑色のオクラの果実が一般的です。しかし、果実が赤色、黄色の栽培種もあるようです。日本で一般的に栽培されているオクラの茎だけがなぜ赤いのかのご質問ですが、これはお答えするのがむつかしいご質問です。

図鑑を見れば、オクラの茎、葉柄などが一部、または全部が赤くなっていますが、この様な色調は一般にアントシアニンによるものです。アントシアニンとよばれる色素はこれまでに1,000以上の種類が植物で見つけられ、植物に多彩な色調を与えています(本質問コーナー、登録番号2175の回答を参照)。
なぜ、オクラの茎、葉柄だけにこの色素が合成されるのかは、わかりませんが、これによってアントシアニンをもたない植物の中では目立つことができ、受粉の時に花にムシをよびよせる(虫媒をたすける)役割をもっているかもしれません。
さらに、一般に植物が水ストレス、強光ストレス、紫外光ストレス、養分ストレス、温度ストレスにさらされるとこの様な色になりますが、この様なことから、アントシアニンは虫媒のためばかりでなく、環境ストレスから組織を守る機能をもっている可能性もあります。アントシアニンは抗酸化作用をもち、これが野菜を摂取することが勧められる理由の一つですが、オクラの葉や茎で生育の時の環境ストレスで生じやすい活性酸素を消去しているかも知れません。

第二のご質問はオクラの果実、茎、葉が、なぜ毛(毛状突起)もっているかについてですが、これについては、本質問コーナー、登録番号1993の回答にありますように、植物の葉や茎などの毛状突起は、果実、茎、葉などがアブラムシなどに食べられないにするためと考えられています。この他に、水ストレスの時、葉の毛状突起は気孔をおおって、蒸散作用によって水を失わないようにしている機能もあると考えられています。

なお、土に生えている時は見えませんが、根にも毛状突起(毛)がたくさんあり、これを根毛とよんでいます。植木鉢に植えた植物を引き抜くと、根毛がびっしりついた根がみられます。根毛は土の中の水分、養分を根が吸収できる面積を広げる役割をもっています。このように植物は根毛によって、土の中の全ての領域から、成長に常に必要な水、無機養分をできるだけたくさん吸収できるようにしています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-07-20
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