一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹幹の腐朽の展開方向について

質問者:   自営業   星の王子
登録番号2228   登録日:2010-06-21
先日公園を散歩していたらクロマツに樹幹注入がしてあり、作業のミスなのか注入箇所から上・下方向に幅7〜8cmにすじ状に腐朽していました。広葉樹の場合は傷の部分から腐朽は下方に展開すると承知していたので、なぜだろうと不思議に思いました。質問です。どうして針葉樹の腐朽は傷から上・下方向へ、広葉樹は傷から下方向へ主に展開するのでしょうか?仮導管と導管との関係はあるのでしょうか?よろしくお願いします。
星の王子 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は森林微生物を専門に研究されている森林総合研究所の窪野高徳先生に伺い、以下の回答をいただきました。針葉樹でも広葉樹でも木材腐朽には方向性はないとのことです。


(回答)
樹木の腐朽病害は材質腐朽病と呼ばれ、主に樹木の辺材部や心材部を腐らせます。病原菌は木材腐朽菌と呼ばれ、菌類(キノコやカビの仲間)に属しています。木部細胞の細胞壁の構成要素であるセルロース類やリグニンを酵素で分解して、栄養を摂取しています。したがって、木材腐朽菌は針葉樹や広葉樹に関わらず、樹体内の辺材部や心材部において、その菌の生育に適した水分や栄養状態にあれば、樹幹の上下に関係なく広がります。なお、マツ材線虫病の防除法として、マツノザイセンチュウの侵入を防ぐために幹に穴を開けて薬液を投与する樹幹注入法があります。適正に穴を開けて注入処理をすれば、腐朽は起こりません。しかし、処理の仕方が悪いと薬液が形成層部に流れ込み、形成層壊死が発生し、そこから腐朽菌が侵入して樹幹腐朽を引き起こす場合があります。この場合も、形成層の壊死部に沿って腐朽が広がりますので、腐朽の展開に方向性はありません。何れにしましても、ご質問にありますように、腐朽の進展には方向性はなく、腐朽菌の生育条件に適した部位へ腐朽が広がります。
以上です。

窪野 高徳(森林総合研究所 森林微生物研究領域)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-06-24
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