一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ポリフェノール合成について

質問者:   大学生   あこ
登録番号2230   登録日:2010-06-23
植物は紫外線などの光から身を守るために、ポリフェノールを合成することを学びました。人間の健康にも良いという赤紫のアントシアニンは有名ですが、そのほかの白や黄色のポリフェノールも同じように健康に良いのでしょうか。また生きている植物から葉を切りとって、それに光を与えてもポリフェノールは合成されるのでしょうか。教えてください。
あこ さま

ポリフェノールは芳香族炭化水素(ベンゼン環)の2個以上の水素がヒドロキシル基(-OH)と置換し、さらにこの様に置換したベンゼン環が多数結合している化合物を総称してよんでいます。植物のポリフェノール化合物は、これまでに一万種類以上、見つけられ、ベンゼン環の数、側鎖の数などによって多種類の構造、種類があり、それぞれが植物で合成されやすい環境条件、それぞれの生理的機能も、植物の種類や組織によって大きく異なるため、今回の質問は一概にお答えできません。

ポリフェノールの中には、カテキンのようにチャの葉に含まれ、恐らく植物の葉の中で抗酸化作用をもっている分子サイズの小さな成分もあります。また、タンニンのように分子サイズが大きい成分もあります。食品中のカテキンはヒトにとっても有効な抗酸化能をもっています。タンニンは植物にとって、虫や動物に食べられないようにするため、また、微生物によって分解されにくくするために合成されると考えられています。南アフリカのサバンナでアカシアの葉が動物によって食べられると、葉に傷がつき、この傷の付いたアカシアの葉からエチレンが発生します。すると、このエチレンガスが信号となって、食べられたアカシアの樹の周りのアカシアがタンニンをたくさん合成するようになります。タンニン含量の多い葉は、渋ガキのように渋くなるため、また、タンパク質とタンニンが結合しやすいために食物が消化できず消化不良を引き起こすため、アカシアの葉が動物によって食べられないようになります。
 
アントシアンなどを代表とするフラボノイドもポリフェノールの一種ですが、これらは可視部(400-700 nm)に吸収をもつため花の色などの色素となりますが、カテキンやタンニンはフラボノイドと異なり無色、または、(黄)褐色です。しかし、カテキンやタンニンは、フラボノイドと同様に芳香族炭化水素をもっているため400 nm以下の紫外線を吸収することができます。これらの成分は太陽光に含まれる、紫外線によってその合成が促進されるため、ポリフェノールは植物で紫外線フィルターとしての機能ももっていると考えられています。この他に、植物の細胞壁に含まれ植物の組織を物理的にも、化学的にも強固にし、セルロース、へミセルロースと共に樹木を数千年も支えているリグニンもポリフェノールの一種です。

葉だけを植物から切り取ると、根からの養分や別の枝からの養分が供給されなくなります。そのため、これらが調べようと考えているポリフェノールの合成に影響がなければ、光の効果を調べることができるでしょう。しかし、これらはポリフェノールの種類によって大きく異なるため、予備実験で植物体と切り取った葉との間に差がないことをきっちりと確かめることが必要です。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2010-07-09
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