一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トウモロコシは糖葉ですが、デンプンも作っているのですか

質問者:   教員   トウモロコシ
登録番号2238   登録日:2010-06-30
授業で「でんぷんを作らない植物もある」ということを学ばせたいと考えています。
しかし、トウモロコシは葉で糖を作っている糖葉であると聞いたのですが、ヨウ素液を垂らすと黒く染まります。実は糖葉でもでんぷんを作っていて,すぐに糖に変えているのですか?
何回やっても、ヨウ素でんぷん反応が起きるのですが、どうしてですか?
トウモロコシ さん

本コーナーに質問をお寄せ下さり有り難うございました。ご質問には山形大学の鈴木 隆先生がお答え下さいましたので、ご参考にして下さい。「糖葉」・「デンプン葉」と全ての植物を決めつけることは難しいようですので、二つのタイプの植物について典型的な例を知る程度で良いのではないでしょうか。

ところで、方法に関してですが、ヨウ素デンプン反応でデンプンを検出するためには熱アルコール処理などで葉緑素を抽出しておく必要がありますね。ところが、抽出のし易さは植物の材料によっては大きく異なっており、どちらかと言えばトウモロコシは抽出しにくい材料の一つですね。

本コーナーにはヨウ素デンプン反応に関連したQ-Aがありますのでご参考にして下さい(例えば、登録番号1149、登録番号1604)。



(鈴木 隆先生からの回答)
光合成では、CO2固定(カルビン回路)の開始に伴い、まず細胞質でショ糖の蓄積と篩管への転流が始まり、やがてショ糖の蓄積が飽和に達すると、葉緑体でデンプンの蓄積が始まります(デンプンは水に溶けないので、葉緑体の浸透圧に影響を与えないから、貯蔵物質としては最適です)。つまり、糖葉とかデンプン葉にかかわらず、どんな植物でもショ糖を合成していることになります。糖葉とかデンプン葉の区別は、ショ糖をどれだけ細胞質に蓄積できるかどうかの能力によってきまります。ショ糖の蓄積能が高いときはデンプンの蓄積量が小さく「糖葉」、ショ糖の蓄積能が低いときはデンプンの蓄積量が大きく「デンプン葉」となると考えられます。オオムギ、ルーピン、タマネギなどは糖葉のようです。

一般に、高等植物の葉では、光合成が行われている間、固定されたCO2の大部分(通常50〜80%)がショ糖に分配され、デンプンへの分配は10〜20%程度であることが多いようです。トウモロコシの葉でも、固定されたCO2の12〜18%がデンプンになるようです(他はショ糖)。したがって、トウモロコシの葉がヨウ素液に反応しても、不思議ではありません。

ところで、合成されたデンプンの蓄積される場所についてですが、トウモロコシの場合、普通の植物とは違い、葉の維管束鞘細胞葉緑体に蓄積されます。これはトウモロコシの光合成がC4回路タイプだからです(地球上の約1%の種がこのタイプで、イネ科、アカザ科、カヤツリグサ科などに多いようです)。多くの植物は、光合成がC3回路タイプで、葉肉細胞の葉緑体にデンプンを蓄積します。

鈴木 隆(山形大学地域教育文化学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2010-07-11
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