一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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売っている果物・野菜から採った種の発芽と生育 

質問者:   会社員   カズママ
登録番号2241   登録日:2010-06-30
こんにちは。

5月中旬に買ってきたアボガドの種を水栽培したら、種にヒビが入り、根が出てきて、発芽のしそうに見えました。小学校3年生の息子と「他の果物や野菜でもやってみよう。」という話になり、イロイロな果物の種を採って、プランターに撒いています。これを夏休みの自由研究の題材にするつもりです。写真を沢山とってあります。本やネットで調べると、「完熟」した果実から種を採って植えると発芽しやすいということだったので、買ってきた果物を10日ほど常温で放置しておいて、グジュグジュになった果実から種をとって植えるようにしました。

(1)発芽しなかったもの。

ハウスイチゴ(腐りかけのものの皮をむくようにして、果実と種を一緒に植えた)
ハウストマト(腐りかけのものの種のまわをくりぬいて、果実と種を一緒に植えた)
温室栽培ビワ(腐りかけのものの種を出して、土に植えた。)
温室栽培さくらんぼ(腐りかけのものの種を出して、土に植えた。)

(2)種は割れて、根が少し出たが、それ以上の発育が進まないもの。

輸入アボガド(種の半分ぐらいに水に沈む入るようにして、水栽培)

(3)発芽したが、葉や茎の生育が進まないもの。

輸入マンゴ(胚を取り出して、プランターに植えた。)

(4)発芽して、それなりに育ちつつあるもの。

完熟かぼちゃ、ポンカン、輸入パパイア

今のところ、以上のように分類できるのですが、発芽しなかったものの理由(多分、種が育ちきっていない等の理由で発芽しなかったかと思いますが)を子供なりに、調べてまとめさせたいと思います。

質問は、
(1)発芽のシステムは、どのような本を、見れば調べられるでしょうか。
(2)これらの観察結果を子供が楽しくまとめるには、どんなところにポイントを置くとよいでしょうか。
(3)温室栽培の果実の種は、「無理に育てた果実」だから、種も発芽する力がないかと、漠然と思っているのですが、本当はどういう理由で発芽しないのでしょうか。
カズママ さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
種子の発芽、成長を観察することは夏休み自由研究の定番ですが、どのような内容を観察するかは頭を悩ますところです。小学校5年、理科の単元に「植物の発芽と成長」という項目があるようですので小学校3年のお子さんでも意味のある観察をすることはできると思います。すでに、いろいろな種子の発芽を試されているようですが、その結果は必ずしも、その作物種子の発芽特性が現れているものではないようです。種子発芽の実験をするためにはやはり「発芽しやすい」種の種子を使うことがよいと思います。すでに試された種子は、トマト以外はすべて「木本植物」で、発芽過程、成長が遅いのでどちらかというと自由研究の発芽実験には不向きなものです。蔬菜類、穀類などの草本性栽培植物は毎年、種子から栽培して収穫するものですから、それらの種子は発芽しやすく、発芽後の成長も速いので発芽、成長の観察に適していると思います。

(1)発芽のシステムは、どのような本を、見れば調べられるでしょうか。

小学生向きの教材補足的なものがたくさん市販されています。しかし、インターネットで「植物の発芽と成長」をキーワードとして調べましたら、前記理科単元の補足的なサイトがたくさんありました。どれでも同じようなものですので参考になると思います。
植物種子は基本的には、酸素、適当な水分、温度条件が整えば発芽しますが、休眠の深さ、光の要求性などは種、品種によって違いますので、場合によっては休眠を破る作業(主として低温処理など)や蒔いた後に光を当てるなどが必要な場合があります。またモモ、クルミのように堅い殻のある種子では吸水が遅いので、殻に孔を明けるなどの操作が必要な場合もあります。種子は、次世代の子どもにあたる胚という部分と、胚が自立成長できるまでの栄養分を蓄えている子葉あるいは胚乳、それらを包む種皮からできています。発芽とは、胚(主に胚軸と幼根)の成長がはじまり、種皮を破って顔をだすことで、胚の成長のために子葉あるいは胚乳の中の栄養分を分解して供給する過程が同時に起こっています。種子に貯められている栄養分はタンパク質、デンプン、脂肪ですが、植物種によってデンプンが主なもの、脂肪やタンパク質をたくさん含むもの、などいろいろです。それぞれ分解の仕方が違いますので発芽でおこる化学的変化はとても複雑です。

(2)これらの観察結果を子供が楽しくまとめるには、どんなところにポイントを置くとよいでしょうか。

自由研究をする子ども達がどんな疑問をもつか(どこに興味、関心をもったか)にかかっています。発芽、成長には酸素、水分、適度な温度が必要で、これらの条件は簡単に変えることができます。また、発芽で一番大きく成長するのは胚のうちでも胚軸と幼根でこれらは種子全体のごく一部です。ほとんどの体積は栄養の蓄積場所である胚乳か子葉ですので、工夫すれば胚軸、幼根に供給される栄養量を変えることもできます。

(3)温室栽培の果実の種は、「無理に育てた果実」だから、種も発芽する力がないかと、漠然と思っているのですが、本当はどういう理由で発芽しないのでしょうか。

温室栽培だから果実や種子が異常だということはありません。発芽しない理由はたくさんあり、1つの理由を挙げることはできません。温室栽培のトマトなどは単為結果といって受粉することなく薬剤処理で果実を肥大させる場合があり、そのようなトマトの種子は完全な種子ではないので発芽しません。イチゴ(オランダイチゴ)などは人が食べられる時期の果実の種子は十分に熟していないものが多いうえ、休眠している可能性があります。また、果肉が発芽を阻害していることもあります。ビワはふつう発芽しやすいもので、発芽しなかった理由はよく分かりません。しかし、ビワやサクランボなどの美味しい品種は複雑な交配で育成された品種ですので発芽率が極端に低下しているものと考えられます。優良品種のサクランボなどの発芽率は数パーセント以下といわれています(私も国産品種サクランボの種子発芽を何度か試みていますが、まだ成功していません)。実際の問題として、水の量が多すぎたり、少なすぎたり、種子の表面消毒が十分でないので微生物が繁殖したりして発芽しないことは多くあります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-07-05
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