一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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フユザンショウの結実

質問者:   一般   山花
登録番号2243   登録日:2010-07-02
どの図鑑やインターネットを見ても、「フユザンショウは雌雄異株で日本には雄株は見られない。」となっています。でも実はたくさんできています。雌株の花を見ても両性花はなく雌花だけのようで自家受粉ではないようです。どのようにして結実するのかお教えください。
山花さま

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。以前、ヤマコウバシについてよく似た質問を頂いたことがありますが、その時に明快なご回答をお寄せ下さった名古屋大学の西田佐知子先生に、今回もご回答をお願いいたしました。西田先生は何人かの研究仲間に尋ねて下さったそうですが、フユザンショウについての研究はないらしく、山花さんのご質問にきちんとお答えすることが出来ないということでした。それでも、以下のようなコメントを届けて下さいましたので、お届けします。山花さんの抱いた疑問はまだはっきりと解くことのできていない疑問のようです。西田先生のコメントの中にもあるヤマコウバシについては登録番号2146 をご参照下さい。


西田先生からのコメント

まず結論から先に言うと、残念ながらわからない、という答えになってしまいました。すみません。フユザンショウについては、まだまだわからないことがあります。
まず、本当に雄株はないのか?、雌株と言われている株に、雄花がついたり、雌花といわれている花に雄しべがついたりすることはないのか?こうした疑問についても、まだきちんと調査をしている人はいないようです。サンショウの仲間には性が変化するものがあるようで、フユザンショウではありませんが、他の種で調査が始まっています(兵庫県の研究者が研究しています)。研究がまだ途中なので、詳しいことは発表出来ない段階ですが、ここ数年のうちには発表されると思いますので、少し気を長くまっていただければと思います(といっても、フユザンショウについても明らかになるかどうかはわかりませんが)。
なお、雄花がなくても結実する木は、他にもあります。たとえば、クスノキ科のヤマコウバシです。これは、雌花に袋をかけて花粉がつかないようにしても、結実するという報告があります。残念ながら、花粉なしで結実できる細かなメカニズムについてはわかっていません。しかし、どのようなメカニズムにしろ、雌花だけで種子ができ、それで世代が回っていっているようです。
生物の繁殖については、まだまだわからないことが沢山あります。その実態すらきちんと掴めていないことも多くあります。そんなとき、一般の方からの情報が、実態を把握したり、答えにつながるヒントになったりすることもあります。ぜひこれからも、野山の生物について、気づいたこと・疑問に思ったことを研究者に伝えてくださればと思います。あまりお役に立てなくてすみません。

西田 佐知子(名古屋大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2010-07-07