一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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朝顔のつぼみ

質問者:   教員   朝顔ふしぎ
登録番号2244   登録日:2010-07-03
子どもの自由研究で朝顔を育てています。頂芽優勢について調べていたのですが、オーキシンの作用が重力によるものかどうかを調べたいと思い、有る程度伸びてきたつるの先端を下に向けて育てるように栽培しています。
高さ1メートルくらいのところで、茎を下に湾曲させるようにしています。その、下に曲げた部分あたりに、双子のようなつぼみができてきました。つまり、葉の付け根に二つずつつぼみができたものが3ペアできました。明らかに花芽で、すでに大きくなってきており、つぼみであることは明らかです。
朝顔の双子のつぼみはあまり見たことがなかった上、3つも連続で出来たので不思議に思ったのですが、単なる偶然でしょうか?それとも、下に曲げたことに関係があるのでしょうか?ちなみに、側芽も出てきたように思います。
ご教示ください。
朝顔ふしぎ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。今回の質問はアサガオの事に詳しい新潟大学の竹能清俊教授に回答をお願いしました。なお、本コーナーへの過去の質問の中に今回と類似のもの(アサガオの葉とつぼみのつきかた)があり、その時も竹能先生に回答をいただいていますので、今回とあわせて読んで下さい。(登録番号1857



[回答]
葉の付け根に二つずつつぼみができたということですが、二通りの可能性があります。アサガオのつぼみには下の方に二つの苞がついています。苞は細く短い緑色の針のような葉の一種といってよいもので、その付け根には花芽が一つ形成されます。この花芽は普通は十分発達せず、つぼみになることはありませんが、栄養条件が良ければつぼみにまで発達することもあります。これが一つの可能性で、もう一つの可能性として、副芽が花芽になったのかもしれません。葉の付け根には一つの芽が作られ、これが花芽または葉芽になりますが、時としてもう一つの芽が作られることがあります。この二つ目の芽が副芽です。これが花芽になれば、葉の付け根に二つつぼみができることになります。ご質問のアサガオの実験では、茎を曲げたことによって曲げたところより下の部分にある側芽の成長が活発になるはずなので、枝(子づる)が伸びだしていると思います。曲げたところより下の部分で花芽ができていたところでも、同じように成長が活発になるので副芽が形成され、これが花芽になることが考えられます。おそらく、こちらの可能性の方が高いと思います。そうであれば、二つつぼみができたことは偶然ではなく、茎を下に曲げたことによるものと思われます。

竹能 清俊(新潟大学)

ところで、頂芽優勢におけるオーキシンの働きが重力によるものかどうを調べているとのことですが、察するに、頂芽からのオーキシンの輸送は重力に関係があり、頂芽を下向きにしてしまうとオーキシンの輸送が止まってしまうのではないかと考えておられるのではないでしょうか。頂芽からのオーキシンの輸送は極性輸送とよばれ、一種のエネルギー消費によるポンプ輸送であって、重力の影響を受けるような単純な拡散輸送ではありません。この問題についても過去の質問への回答を参考になさって下さい。(登録番号1539、登録番号1925)。なお、頂芽優勢に関わる植物ホルモンはオーキシンの他にサイトカイニンがあります。最近、第三の因子としてストリゴラクトンと呼ばれる物質が明らかにされています。この物質は枝分かれを誘起するホルモンです。
一般に植物はまっすぐ伸びている茎を無理に曲げたりすると、ストレスがかかり植物体にさまざまな影響をもたらします。それはなにか単一の要因の変化だけに帰する事できません。むかし、インゲンの蔓の巻く方向を無理矢理逆にしてやると、たくさん花が着き、実がなるという研究報告を読んだ事があります。植物にとってストレスは繁殖の一大事でもありますから、できるだけ沢山種子を作らねばならないという反応の結果かもしれませんね。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2010-07-09
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