一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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海辺の植物の葉の不思議

質問者:   一般   不思議大好き子
登録番号2248   登録日:2010-07-08
海辺の植物観察はその厳しい生育環境に適応している姿をあれこれ想像して観ると楽しいです。ハマゴウの葉は盛夏の日中には、葉の縁が上にめくれるように反転します。トベラは逆です。何故なのか気になります。
不思議大好き子様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を、葉っぱのことならなんでもという東京大学の塚谷裕一先生にお願い致しました所、早速、以下のようなご回答をお寄せ下さいました。塚谷先生もおっしゃっておられますが、楽しい自然観察を続けられ、質問を当コーナーにお寄せ下さいますようお願いいたします。


塚谷先生からのご回答

不思議大好き子さま
ご質問ありがとうございます。はい、海辺の植物はかんかん照りのもと、潮風に吹かれていますから、葉が焼き切れてしまわないよう、色々工夫していますね。
光合成は水と二酸化炭素とを、光のエネルギーを使って炭水化物に変える化学反応ですから、光が多すぎたり、二酸化炭素や水が足りないと、葉緑体が焼き切れてしまいます。ですので海辺の植物は、普段から葉の裏に毛を生やして水の不足が生じにくいようにしたり、葉柄を立てて葉の面を太陽光に対してやや半身になるようにしたりしています。森の中だと明るすぎるよりは暗くて困ることの方が多いので、一生懸命、葉の面を上に向けて光を集めようとしますが、海辺だとむしろ光が強すぎるのですね。
ハマゴウがどうしているかをちゃんと観察したことはないのですが、たしかにトベラは葉を裏側に巻き込みます。もともとトベラの葉は平坦というより少し裏側に丸まり加減なので、そっちの方が楽なのではないでしょうか。海辺ではありませんが、高山帯に生えるシャクナゲの類も、葉が普段から少し裏側に巻き加減で、そこへ寒さがやってきたり、乾いたりすると、もっとはっきり裏に丸まります。裏に向かって丸まるほうが、乾ききらないようにする上では効率が良さそうです。
その反面、光を受けて光合成というとても激しい化学反応を行なう表面を、外に向けてしまっている点では、強い光で葉緑体が焼き切れてしまう可能性が残ってしまいます。ハマゴウはたぶん、そちらの心配から表を巻き込んで強い光から葉の表面をかばっているのではないでしょうか。
あとは上記の通り、もともとの葉の曲面がどっちを向いているかにもよります。
葉が芽の中でどう畳まれているかをいろいろ見比べてみると、実にさまざまで、二つ折りのもの、巻いているものなどいろいろです。またそれを平良に展開するやり方も色々で、静かに巻きをほどくもの、いったん逆向きまで乱暴に開いてしまってから、慌てて戻って平らにするものなど、個性があります。そうしたやり方とも、この話は関係しているように思います。是非今後も続けてご観察ください。

塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科・教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2010-07-11
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