一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物には免疫細胞があるのでしょうか?

質問者:   中学生   えっぴい
登録番号2250   登録日:2010-07-12
学校で、理科の第二分野の、細胞のところの単元を習っているところです。
そして、ヒトの体のつくりとして、血液なんかの白血球というも習いました。
ヒトには、白血球以外にもウイルスが入ったときの対応として、色々な免疫細胞が、それぞれの役割をにない存在しているのは、おぼろけながら知っているのですが、ヒト(動物)の対照的である生き物、植物には、そのような免疫細胞が存在するのでしょうか!?
そうなると、ミジンコ、ミカヅキモ、ハネケイソウといった微生物にもあるのでしょうか・・・?  それら微生物は、多細胞生物か単細胞生物かですよね。それと免疫細胞とも関係があったりするのでしょうか?  ウイルスといった有害なものを自らの体内でのぞこうとする、そのような免疫細胞があって、生命体は今に受け継がれているのだと思います。。。
えっぴいさん

白血球のことを習って、植物や微生物はどのように感染に対応しているのだろうということを疑問に思われる、その素直な感性に感心しました。植物の病原体応答の最先端の研究をされている白須先生に聞きました。


えっぴいさん

とてもいい質問ですね。植物に免疫細胞という特別の細胞は今のところ見つかっていません。植物は動物のように抗体ベースの免疫システムはありません。ですが、もちろんいつも病原体と戦っています。これは、一つ一つの細胞それぞれが病原体を認識する自然免疫というシステムで、ヒト、動物やハエ、さらにはカビでもあります。おそらく真核生物のもっとも原始的な免疫システムのひとつであろうと考えられます。真核生物の細胞は常に非自己の侵入を認識するシステムがあるわけです。植物の場合は、カビの細胞壁や細菌の鞭毛を認識して抗菌物質や加水分解酵素を生産できます。この他にも、感染された細胞を自殺させ、病原体を広がらないようにする過敏感反応と呼ばれる抵抗反応も誘導できます。この場合、葉の上に死んだ領域が小さな茶色い斑点となります。強力な防御反応ですが、それぞれの植物がその仕組みを発動できる対象の病原体は限られています。またウイルスに関してはその他に、RNA干渉という配列特異的な免疫システムが動きます。いちどウイルスが侵入するとそのRNAを認識して、次におなじRNAが入ってくると特異的に分解するというシステムです。ただウイルスによってはこの機能を阻害するタンパク質をもっているため、感染できます。

詳しくはhttp://www.riken.jp/r-world/info/release/news/2009/jun/frol_01.htmlをご覧ください。

白須 賢(理化学研究所植物科学研究センター・グループディレクター)
広報委員長
柿本 辰男
回答日:2010-07-14
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