質問者:
公務員
高子
登録番号2253
登録日:2010-07-13
普段はLCやLC/MSなどを用いて、医薬品や生薬中の成分分析を行っています。生薬を加湿して、ある一定温度までは目的成分が減少するのですが、ある温度以上になると逆に増えてくることがわかり、推測ですが酵素の影響かと考えました。植物生理学についてはあまり詳しくないため、酵素の種類また抽出法もわかりません。調べてもなかなか具体的な操作法が載っていないため、行き詰まっております。目的成分は、二量体が分解し、脱炭酸していると考えられます。このような働きをする酵素があれば、植物の葉にあるのかどうか、また根茎にもそのような酵素が同じくあるのか。あればそれら酵素の抽出法を教えていただきたいと思います。できれば特殊な器具や装置を使用しない簡便な方法があればと思っております。よろしくお願いいたします。
みんなのひろば
植物からの一般的酵素の抽出法について
高子 さま
植物の全ての成分はCO2、H2Oと、土から吸収された14種の元素から、多くの段階の反応によって合成されますが、これはそれぞれの反応を触媒する多数の酵素によって進行しています。酵素は高分子の蛋白質であり、酵素が活性をもつためには水が必要であり(蛋白質の水和)、また、蛋白質は熱(〜50度C以上)によって変性を受けやすく、酵素分子の構造が変化し、大部分の酵素はその活性を失います(熱変性による失活)。このように酵素蛋白質の乾燥変性、熱変性によって、不可逆的に酵素活性を失いますが、しかし、酵素の中にはこれらの乾燥変性、熱変性による失活が可逆的な酵素もあります。生物によっては乾燥状態になっても、これに水を加えれば酵素の活性が短時間の内に回復できる場合もあります。例えば、パン酵母は乾燥しても、水を加えるとほとんどすべての酵素が活性を回復し、その結果、直ちに酵母は増殖することができます。また、砂漠に生えている植物で、水が全くないときは枯れたようになって光合成もできませんが、霧や露のような微量の水によって、酵素活性が分単位で回復し、光合成ができる種もあります。しかし、植物酵素の大部分は乾燥によって失われた活性は水を与えても活性を回復できず、まして、酵母のように、全ての酵素が回復して植物を成長させることはできません。
生薬は、くすりとしての有効成分が多くなった状態に成長した植物の器官を乾燥し、水がない状態で室温に保存でき、有効生薬成分がそれ以上に変化しない、安定した状態と考えられます。測定している酵素蛋白質が乾燥によって不可逆的に失活していなければ、水を吸収して酵素活性が部分的に活性を回復することはあり得ることです。生薬を加湿し、水分が乾燥した植物組織に吸収されると、調べておられる2量体の成分が分解しCO2を放出する反応を進行させるようですが、これが、植物に含まれていて乾燥変性していた酵素であるかどうかは、いくつかの検証が必要です。水分の他に温度条件も“目的成分”の分解に必要のようですが、どの程度の温度でしょうか?これが50度C以上であれば、酵素の熱変性が生じやすいため酵素による分解ではなく、生薬成分の熱分解である可能性もあります。酵素反応の出発物質である基質と反応産物について、文献でそのような反応があるかどうかを、まず調べることが必要です。酵素反応はそれぞれ特異的な性質をもっている数千種の酵素によって進行し、文献に記載がない新しい反応を触媒する酵素であれば(新しい発見であり)、酵素の抽出法、酵素の安定性、酵素活性の測定法などについて、多くの酵素にならって、妥当な方法を確立する必要があります。
植物の全ての成分はCO2、H2Oと、土から吸収された14種の元素から、多くの段階の反応によって合成されますが、これはそれぞれの反応を触媒する多数の酵素によって進行しています。酵素は高分子の蛋白質であり、酵素が活性をもつためには水が必要であり(蛋白質の水和)、また、蛋白質は熱(〜50度C以上)によって変性を受けやすく、酵素分子の構造が変化し、大部分の酵素はその活性を失います(熱変性による失活)。このように酵素蛋白質の乾燥変性、熱変性によって、不可逆的に酵素活性を失いますが、しかし、酵素の中にはこれらの乾燥変性、熱変性による失活が可逆的な酵素もあります。生物によっては乾燥状態になっても、これに水を加えれば酵素の活性が短時間の内に回復できる場合もあります。例えば、パン酵母は乾燥しても、水を加えるとほとんどすべての酵素が活性を回復し、その結果、直ちに酵母は増殖することができます。また、砂漠に生えている植物で、水が全くないときは枯れたようになって光合成もできませんが、霧や露のような微量の水によって、酵素活性が分単位で回復し、光合成ができる種もあります。しかし、植物酵素の大部分は乾燥によって失われた活性は水を与えても活性を回復できず、まして、酵母のように、全ての酵素が回復して植物を成長させることはできません。
生薬は、くすりとしての有効成分が多くなった状態に成長した植物の器官を乾燥し、水がない状態で室温に保存でき、有効生薬成分がそれ以上に変化しない、安定した状態と考えられます。測定している酵素蛋白質が乾燥によって不可逆的に失活していなければ、水を吸収して酵素活性が部分的に活性を回復することはあり得ることです。生薬を加湿し、水分が乾燥した植物組織に吸収されると、調べておられる2量体の成分が分解しCO2を放出する反応を進行させるようですが、これが、植物に含まれていて乾燥変性していた酵素であるかどうかは、いくつかの検証が必要です。水分の他に温度条件も“目的成分”の分解に必要のようですが、どの程度の温度でしょうか?これが50度C以上であれば、酵素の熱変性が生じやすいため酵素による分解ではなく、生薬成分の熱分解である可能性もあります。酵素反応の出発物質である基質と反応産物について、文献でそのような反応があるかどうかを、まず調べることが必要です。酵素反応はそれぞれ特異的な性質をもっている数千種の酵素によって進行し、文献に記載がない新しい反応を触媒する酵素であれば(新しい発見であり)、酵素の抽出法、酵素の安定性、酵素活性の測定法などについて、多くの酵素にならって、妥当な方法を確立する必要があります。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2010-07-15
浅田 浩二
回答日:2010-07-15