一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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塊茎野菜の生長段階別生長生理

質問者:   一般   レタス
登録番号2257   登録日:2010-07-15
1.今、ニンニクの発芽試験をしています。素朴な疑問ですが、ニンニクは馬鈴薯と同じ塊茎野菜ですが、塊茎内での栄養体からの幼葉の生長時期と発芽前後の時期と発芽後の葉茎の生長時期に分けて、各時期での生長生理上の差異について教えて下さい。

特に、各時期での生長早さやそれら各時期での生長に影響する主たる要因は何に因るものとかです。 次に、

2.一般葉物野菜は、ニンニクで言えば、発芽後の葉茎に相当すると思いますが、これらの生長上の違いはありますか?
レタス さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ニンニクは香辛作物として重要な作物の1つでたくさん栽培されていますが、ニンニクの各成長段階における成長生理を詳しく調査した研究が見つかりませんでしたので、一般的な立場でお答えします。
まずニンニクは「馬鈴薯と同じ塊茎野菜」ではありません。タマネギ、ラッキョウなどと同じく短い茎の周辺の葉の基部が膨らんだもので鱗茎というものです。鱗茎の中心に短い茎があり、その先端の葉が成長を初めて「発芽」してくるものです。鱗茎の主体である肥厚した葉は栄養分を蓄えていて、芽(新葉)の初期成長を支えます。ニンニク栽培は茨城以北青森が盛んですが、一般的な栽培例を見てみます。ふつうの栽培条件では、8月から9月中旬にかけて鱗茎を地中(数センチメートル下)に植え付けます。ニンニクの発芽は比較的速く10月上旬には地上に顔をだすはずです。鱗茎の発芽までと、芽が地上に顔をだすまでは、鱗茎に蓄えられていた栄養分に支えられて成長しています。10月上旬から中旬に葉が地上に顔をだして光にあたると葉緑体が形成され、光合成がはじまり二酸化炭素を固定して自身が糖類を合成しますのでこれが成長を支えはじめます。しかし、まだ鱗茎には栄養が残っていますので、この時期には鱗茎の栄養分と、光合成で合成した糖類の両方を消費して成長しています。一般に暗中(土壌中)での成長は早く、光によって幾分遅くなります。しかし、光にあたると、新たな葉の形成がはじまり10月下旬には、数枚の葉をだして光合成も盛んになり立派な栄養体となります。この時期には鱗茎内の栄養分はなくなっていますので光合成産物が成長を支えます。やがて冬がきて雪の下に埋もれると成長を休止しますが、翌春、雪が溶けて気温が上がれば再び活発な成長がはじまり、新たな鱗茎形成がはじまります。気温が高く、日照が十分あれば成長は活発ですが、気温が低下すれば成長は低下します。5月から6月にかけて花茎が伸び始め花を咲かせる準備がはじまりますが、ふつうの栽培は鱗茎を収穫するので花茎を切除します。花芽形成、開花、結実は非常に多くのエネルギーと栄養分を消費するため鱗茎の成長が悪くなるからです。花が先端に着くので花茎といいますが、これがニンニクの目に見える茎で成長(伸長)は葉の成長よりもはるかに速いものです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-07-16
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