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肥料塩の浸透圧について。

質問者:   自営業   A・S
登録番号2258   登録日:2010-07-16
引き続き、質問させていただきます。
植物の根と浸透圧の項目をよく目にします。
硝酸カルシウムとか硫酸アンモニウムなど、肥料塩の浸透圧は○○気圧であると計算式で書かれているのですが、これはそれらの肥料塩が溶けている水(溶媒)の浸透圧と考えていいのでしょうか?
または、肥料塩(イオン)そのものが浸透圧にしたがって、受動的に根に移動するのでしょうか?
もし、受動的に吸収されるのであれば、植物の育っている培地(土壌)の成分と植物体の成分は同一であり、投与した肥料塩の過不足による生理障害は発症しないはずと考えています。
また、○○気圧を導く計算式は、植物体のイオン濃度は考慮しなくて良いのでしょうか?
植物体のイオン濃度は、同一内圃場においても生育する環境(温度・日射量・湿度など)によって変化があると考えるのですが、間違いでしょうか?
ご教授のほど、よろしくお願い申し上げます。
A・S様

質問コーナーへの再度ご来場を歓迎いたします。回答が遅くなってしまいました。前回の質問への回答で紹介した植物生理学の教科書は読んでいただけた事と思います。浸透圧(現在は浸透ンポテンシャルという概念で扱われていますが)のことも詳しく書かれているはずですので、ここでは簡単にお答えいたします。

1)まず、肥料塩(あるいは物質)の浸透圧という事はありえません。何かの溶液(例えばブドウ糖、食塩など)の浸透圧ということでしょう。浸透圧は溶けている溶質の種類には関係なく、溶質(溶けている分子)の濃度に依存します。ある濃度範囲では比例します。

例えば、硝酸カルシュウム溶液の浸透圧が0.2Mpa(メガパスカル:以前は気圧(atm)という単位を使っていた。)、で、食塩溶液の浸透圧が同じく0.2MPa、また、ブドウ糖の浸透圧も0.2MPaだったとします。これらの溶液にふくまれる溶質の濃度は同じという事になります。ブドウ糖は解離しませんし、この濃度では完全に水にとけますので、すべてのブドウ糖の分子が溶質として働きます。しかし、塩類は解離しますので、解離したイオンが溶質として働きます。食塩の分子が100%水に溶けたとします。食塩と同じモル濃度のブドウ糖の溶液と比べると、浸透圧は食塩水の方が2倍高くなります。しかし、物質の種類により解離度が異なります。同じモル濃度でも同じ浸透圧を示すとはかぎりません。そして解離度は温度に依存します。


2)根による物質の吸収は水と異なって受動的吸収は起こりません。もちろん、細胞内ではなく細胞壁(アポプラスト:登録番号0246, 登録番号0479を読んで下さい))を通って根の組織内への流入は水と一緒に起きます。細胞壁から細胞内へは細胞膜を透過しなければなりませんので、受動敵移動に関しては細胞膜は半透性なので、水以外の分子はそのまま通れません。分子が膜を透過する仕方は前回お答えした通りです。


3)肥料等の塩濃度が高くて障害が起きる主な原因は、これらの塩類のアポプラストにおける濃度が高くなり過ぎた結果、アポプラスト中の自由水(登録番号0479参照)の浸透圧が細胞内の浸透圧よりもたかくなって、水が逆に細胞内からアポプラストへ出てしまう事になるからです。

JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-08-25
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