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ロゼット(葉の生え方の一種)のメリット

質問者:   会社員   井藤裕一
登録番号0226   登録日:2005-03-30
ロゼットというのは植物にとってどういうメリットがあるのでしょうか?

よく「冬はロゼットのままで過ごし………」という説明を目にするので、気温と何か関係があるようにも思われますが、タンポポは暖かくなって花が咲いた後もロゼットは存在し続けていますし、他にもロゼットから茎が伸びてロゼットとは別の葉をつける植物もありますので、もっと別のはっきりした存在理由があるように思えるのですが、具体的に「なぜロゼットになるのか」を説明しているところに出会えたことがありません。

ロゼットが他の葉と区別される外見以外の機能的な特徴があるようでしたらご回答のほどよろしくお願いいたします。
井藤 裕一さま

 回答が遅くなりました。
 ロゼットとは、短い茎の部分に多数の葉が密集し全体として丸い形状をなすものです。ご質問にもあるタンポポなどのキク科植物やキャベツなどのアブラナ科の植物の例が身近かと思います。こうしたロゼットをつくる植物も一生を通じて常に茎が短いわけでなく、個体が成熟し子孫を残すときには、ふつう茎を長く伸ばしその先に花をつけます。
 さて、ロゼットにどのようなメリット(長所)があるかですが、急がば回れで、まずデメリット(短所)について考えてみましょう。植物にとって光を葉で受けることは生命線です。ところが、ロゼットのように茎が短いと葉の展開する位置が低くなり、他の植物の影に入りやすくなります。これは非常に大きなデメリットです。ですから、ロゼットとして生きていけるのは、他の大型植物が生育できないような厳しい環境条件下に限られることになります。そうでないとふつうの植物との競争に負けてしまうのです。
 しかし、他に大きな植物がいないという条件さえ満たされれば、ロゼットのメリットがいくつもでてきます。まず、茎をつくるためのエネルギー投資を節約できます。その分を葉に設備投資して光合成による生産力を増強したり、根などに栄養を蓄え、将来子孫を残す際の糧としたりすることができます(メリット1:エネルギーの節約)。ただし、茎が短く葉が密集するので、自分の葉同士が重なるのを防ぐため葉は茎のまわりに放射状に配置している必要があります。そのためロゼットは全体に丸い形になります。植物には、葉が茎の両側に2列に並んでいたり(シャガなど)、葉が上から見て十字状に4列に並んでいたり(シソなど)するものもありますが、ロゼットをつくる植物にはそうしたものはみられません。このような葉の配置では葉同士の重なりが大きくなるからです。
 大きな植物が育たない条件を満たす代表的環境として、冬の地面があります。タンポポのようにロゼット葉を地面にはり付くように展開していれば、気温が低くても日射で暖まった地面の熱で葉温が上昇し、光合成が盛んになる効果があると考えられます(メリット2:葉温の上昇)。昼間、光合成で獲得したエネルギーは夜間、呼吸作用により消費されますが、冬は温度が低く呼吸作用が小さいので、冬のロゼット植物の生産性はかなり高いという指摘があります。競争相手のいない冬の間にせっせと稼いで、春、他の植物が育ちだすころには、花を咲かせて子孫を残すというのが、ロゼット植物の生き方のひとつといえます。なお、昆虫に授粉してもらうために花を目立たせたり、風などで種子を遠くに飛ばしたりするためには、花の位置は高くないと困るので、花を咲かすときには茎を長く延ばします。
 このほか、葉を地面にぴったりはりつけるようにしていると、風で傷つけられにくく、人間の草刈りや動物の食害から免れやすいことも考えられます(メリット3:機械的傷害の回避)。
 大きな植物の育たないもうひとつの代表的環境は、河原や砂丘などの石や砂で覆われた荒れ地です。こうした過酷な環境では、種子から芽生えて何年もの間ロゼットの状態で少しずつ成長し、栄養を蓄えたのち、茎をのばして花を咲かせるという生活パターンを示します(オオマツヨイグサ、カワラノギクなど)。冬場の地面とちがい夏場の石や砂の表面は、致死的温度に達するためこうした植物の場合、地表から離れた位置でロゼットをつくり、地面の熱を避けています(カワラノギク)。
 なお、ヒマラヤやアフリカなどの高山帯では、体のサイズがメートル単位になる大型のロゼット植物が存在します。こうしたロゼット植物では、夜、ロゼットの葉をぴったり閉じて芽のようになったり(“夜芽”)、水を分泌したりして葉と葉の隙間をふさぐことで、低温の夜間に葉が凍結して傷害を受けるのを防いでいると言われています(メリット4:葉の凍結防止)。
 最後に、ロゼット葉と他の葉とを比べ外見以外に機能的な特徴がないかとのご質問ですが、私の知る範囲で文献を調査したり、知り合いの研究者にたずねたりするなどしましたが、これといった情報は得られませんでした。光合成の温度特性や気孔の分布・開口特性など違いがあっておかしくない気もしますし、もっとよく調査すればそうした特徴のあることがわかるかもしれません。
奈良女子大学
坂口 修一
回答日:2009-07-03
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