一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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果物や果物の水分について

質問者:   小学生   かな
登録番号2278   登録日:2010-08-10
自由研究で、野菜と果物の水分量を調べています。
分からない点があるので、教えて下さい。

1、果物や野菜をしぼったカスは、食物繊維だけですか?
2、水分量の違いは何ですか?(私が調べた結果、炭水化物の量だと思うのですが)
3、果物や野菜はほとんど水で出来ているのに、どうしてグチャグチャにならないのですか?
かな さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
夏休みの自由研究に果物の問題を取り上げたのはとても楽しい研究になりそうですね。3つの関連するご質問がありますので1つずつお答えします。
1.食物繊維には水に溶けるものと水に溶けないものがあります。水に溶けるものの代表は果物にたくさん含まれるペクチン(ジャムのもとになる炭水化物です)、水に溶けないものの代表はセルロースやリグニンなどです。果物や野菜をしぼると、含まれていた水が押し出されるのですが、そのとき組織や細胞も壊れますので水に溶ける食物繊維も一緒に溶けだしてしぼり汁の中に混ざってきます。でも、ただ手などでしぼっただけではすべての水に溶ける成分が絞り出されませんので、そのしぼりかすにはかなりたくさんの水に溶ける成分が水に溶けない食物繊維などの間にくっついています。果物や野菜を水と一緒にミキサーにかけてからしぼる(漉す)ことを繰り返して、水に溶ける成分を全部取り除いた後のしぼりかすはすべて水に溶けない食物繊維と見てよいと思います。
2.重要な疑問ですね。でもよく調べられ、その通りだと思います。果物、野菜類の水以外の成分では炭水化物がいちばん多い成分で、脂肪、タンパク質は圧倒的に少ないものです。ですから、新鮮重あたりで言うと、炭水化物の多いものは水分が少ないという関係にほぼなっています。これらの炭水化物は植物細胞を形作っている骨組みにあたる細胞壁成分ですので、細胞壁の厚さによって炭水化物の総量が少しずつ違い、水分含量も違っています。バナナは果物には珍しくデンプンを貯蔵していますので、炭水化物の総量はほかの果物のほぼ2倍あります。それにともなって水分含量も少なくなっています。
かなさん!資料で調べるのも自由研究の1つだと思います。文部科学省が「日本食品標準成分表」というのを公開しています。日本で食品となっているものの水分、タンパク質、脂質、炭水化物、エネルギー、灰分などの標準含量を示した表ですが、その中に果実類という項目
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/002/007.pdf
があります。数字の集まりですが、いろいろ考えたら面白い研究ができると思いますが。
3.これもとても重要な疑問ですね。生物はすべて細胞という袋状のものが単位となって出来ていますね。この袋は細胞膜という脂質とタンパク質でできた薄い膜でできていて、細胞の水はこの袋の中にあります。植物細胞ではさらにその外側に、上に述べたような細胞壁があって細胞を頑丈にしています。ですから、細胞の中に水がたくさんあっても細胞の外にもれることはなく、ゴム風船の中に水を入れたような形になっています。細胞の外側、細胞壁にも水はありますがセルロースなどの高分子の炭水化物に吸着されていますので、組織全体として「グチョグチョ」にならないのです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-08-11
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