一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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イヌビワの雄株(虫えい株)の雌花について

質問者:   その他   佐久間智也
登録番号0228   登録日:2005-04-02
はじめまして、よろしくおねがいします。

イヌビワコバチとの共生で有名なクワ科イチジク属のイヌビワですが、雌株の花嚢には雌花しかできなくて、それは受粉して種子をつくりますよね。
雄株は虫えい株とも呼ばれるように、花粉を運ぶイヌビワコバチのために花嚢を形成しますよね、その花嚢には雄花と雌花がありますけれど、その雌花は不稔性なんでしょうか?
イチジクでは不稔性ということが報告されてるみたいなんですが、イヌビワではどうなんでしょう?

よろしくお願いします。
佐久間 智也さま

 回答が遅くなりました。
 もし雄株のなかにある雌花が不稔性だったら,花粉を運ぶイヌビワコバチを育てることができず,イヌビワもコバチも次世代を維持できません.雄株の雌花はコバチによって運ばれた花粉で受精し,種子形成を開始します.でも雄株の種子の中身はコバチの餌として利用されるため,種子まで成長できません.従って,イヌビワ雄株の雌花は不稔ではないが,ふつう種子はできません.

 イヌビワとイヌビワコバチに詳しい,大阪市立自然史博物館の岡本素治さんから以前に聞いた話しでは,非常にまれだがイヌビワ雄株でも種子ができることがあるそうです.しかし,鳥などが雄株の果実は食べないため,この種子が散布されることはないそうです. ゴールデンウイークになって,神戸ではイヌビワ雄株の越冬果からコバチが羽化し始めました.イヌビワの種子はやや扁平で肌色の種皮に包まれており,コバチが入って球形になった虫えいとは簡単に区別できます.そこで,コバチがでたあとの雄株の果実(2個体,42個の果実)を採集して観察しましたが,残念ながら種子は見つかりませんでした.夏場と違って,冬越しの雄花では羽化できなかったコバチが予想外に多く見られました.

>イチジクでは不稔性ということが報告されてるみたいなんですが...

日本で栽培されているイチジクはすべて雌株で,花粉が受粉しなくても果実が成熟する(単為結果)品種です.果実のなかには種子の粒がみられますが,中身は空っぽでこれは確かに不稔です.
神戸大学
 小菅 桂子
回答日:2009-07-03
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