質問者:
一般
ともこ
登録番号2280
登録日:2010-08-12
夫がベランダ菜園できゅうりを作っています。きゅうりの実の中身
長さ5〜6cmのきゅうりの実も数日のうちに急激に肥大化するのを見ては驚きいくつか疑問に思いご質問いたします。
1、昼間、光合成でできた糖その他は、瞬時に蓄積、運搬、分配されるとも思えず、いったいどれくらいの時間を要して茎や葉や実の細胞の成長に反映するのでしょうか?
2、実の生長は、人間と同じ夜に伸びると勝手に想像し、朝7時と夜7時に長さと体積を測りました(ペットボトルの水に沈めて体積を測定)が、予想に反し、昼夜同じように大きくなりました。光合成の明反応と暗反応それぞれの昼夜の度合いと実の生長の間に関係性はありますか?
3、光合成でできた養分は茎、葉、実の細胞分裂までにどのような過程をたどるのでしょうか?
4、生長して増えた実の体積は細胞分裂によるものなのでしょうか?細胞の肥大に関与する成分は何ですか?
ともこ さん
ご自分でなさった実験・観察に基づいた興味深い質問をお寄せ下さり有り難うございます。夏休みの時期を挟んだため少し遅くなりましたが、この質問には理化学研究所の杉本慶子博士(植物科学研究センター・細胞機能研究ユニット)が下記のような回答文をご用意下さいました。ご参考にして下さい。
―杉本博士からの回答―
質問(1)への回答:
昼間光合成によって葉で固定された光エネルギーは、一部はショ糖に変換され、師管を通って生長の盛んな組織へ輸送されます。また、一部はデンプンの形で葉の葉緑体内に貯蔵されます。夜間には、貯蔵されたデンプンはショ糖などに分解され、茎や根などの生長組織へ輸送されます。このように、葉で固定されたエネルギーは師管を通して常に様々な組織へ運ばれ、呼吸や成長に使われています。光合成活性や植物の成長速度は植物種や様々な環境要因(光強度、水分量、湿度、温度等)によって大きく左右されますので、光合成がどのくらいの時間を要して茎や葉、実などの生長に影響を与えるかに関しては一概には答えられませんが、例えば糖の転流には、師管液のショ糖の浸透圧が重要であることが分かっているので、昼間に行われる光合成は、師管液におけるショ糖濃度の変化を通して、常に生長器官に影響を与えているといえるかもしれません。
質問(2)への回答:
上に述べましたように、日中に光合成によって作られた産物はショ糖として果実に運ばれるほか、一部は葉でデンプンとして蓄積されます。そして夜間にはこの蓄積したデンプンの分解産物を果実に送り込むことによって生長を助けます。このため、昼夜での生長に差が見られなかったのではないでしょうか。仮にキュウリを暗所で長期間育てると蓄積されたエネルギーが減少し、生長速度も低下すると考えられます。また長雨などが続いて、デンプンの貯蔵量が低い状態では、夜間の生長が抑制される可能性も考えられます。
質問(3)への回答:
茎、葉、実などの組織が大きくなるには、細胞分裂(細胞数が増える)と細胞成長(ひとつひとつの細胞自体が大きくなる)のどちらか(もしくはどちらも)が起こる必要があります。どちらも細胞膜や細胞壁などを構成する化合物の合成を必要としますので、光合成で得られたエネルギーは師管転流を介して実などの組織へ運ばれ、それらの合成に使われます。しかし、細胞分裂の制御には、光合成からのエネルギーだけでなく様々な要因や成長因子が関与しており、その詳細な機構は完全には明らかになっていません。
質問(4)への回答:
キュウリの実は、初期に盛んに細胞分裂が起こった後、それらの細胞が肥大化(細胞成長)することによって大きくなることが知られています。肥大化した細胞では、その体積のほとんどを液胞が占めていることから、細胞の肥大には液胞への水の取り込みが大きく関与しています。
杉本 慶子(植物科学研究センター細胞機能研究ユニット)
ご自分でなさった実験・観察に基づいた興味深い質問をお寄せ下さり有り難うございます。夏休みの時期を挟んだため少し遅くなりましたが、この質問には理化学研究所の杉本慶子博士(植物科学研究センター・細胞機能研究ユニット)が下記のような回答文をご用意下さいました。ご参考にして下さい。
―杉本博士からの回答―
質問(1)への回答:
昼間光合成によって葉で固定された光エネルギーは、一部はショ糖に変換され、師管を通って生長の盛んな組織へ輸送されます。また、一部はデンプンの形で葉の葉緑体内に貯蔵されます。夜間には、貯蔵されたデンプンはショ糖などに分解され、茎や根などの生長組織へ輸送されます。このように、葉で固定されたエネルギーは師管を通して常に様々な組織へ運ばれ、呼吸や成長に使われています。光合成活性や植物の成長速度は植物種や様々な環境要因(光強度、水分量、湿度、温度等)によって大きく左右されますので、光合成がどのくらいの時間を要して茎や葉、実などの生長に影響を与えるかに関しては一概には答えられませんが、例えば糖の転流には、師管液のショ糖の浸透圧が重要であることが分かっているので、昼間に行われる光合成は、師管液におけるショ糖濃度の変化を通して、常に生長器官に影響を与えているといえるかもしれません。
質問(2)への回答:
上に述べましたように、日中に光合成によって作られた産物はショ糖として果実に運ばれるほか、一部は葉でデンプンとして蓄積されます。そして夜間にはこの蓄積したデンプンの分解産物を果実に送り込むことによって生長を助けます。このため、昼夜での生長に差が見られなかったのではないでしょうか。仮にキュウリを暗所で長期間育てると蓄積されたエネルギーが減少し、生長速度も低下すると考えられます。また長雨などが続いて、デンプンの貯蔵量が低い状態では、夜間の生長が抑制される可能性も考えられます。
質問(3)への回答:
茎、葉、実などの組織が大きくなるには、細胞分裂(細胞数が増える)と細胞成長(ひとつひとつの細胞自体が大きくなる)のどちらか(もしくはどちらも)が起こる必要があります。どちらも細胞膜や細胞壁などを構成する化合物の合成を必要としますので、光合成で得られたエネルギーは師管転流を介して実などの組織へ運ばれ、それらの合成に使われます。しかし、細胞分裂の制御には、光合成からのエネルギーだけでなく様々な要因や成長因子が関与しており、その詳細な機構は完全には明らかになっていません。
質問(4)への回答:
キュウリの実は、初期に盛んに細胞分裂が起こった後、それらの細胞が肥大化(細胞成長)することによって大きくなることが知られています。肥大化した細胞では、その体積のほとんどを液胞が占めていることから、細胞の肥大には液胞への水の取り込みが大きく関与しています。
杉本 慶子(植物科学研究センター細胞機能研究ユニット)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2010-09-01
佐藤 公行
回答日:2010-09-01