一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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中空な植物について

質問者:   中学生   でんでん
登録番号2282   登録日:2010-08-16
僕は茎が中空な植物について気になり、自分なりに観察などをして調べましたが、全く分からなかったので中空な植物の共通点について教えてください。
でんでん さん


みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

茎が中空かそうでないかは場合によっては似た植物を見分けるのに使うほど重要なことで、そのようなことに関心をもたれたことに敬意をもちます。今までは茎が中空であることの利点を生理生態学的な立場で考えることはありました(たとえば登録番号1319の質問)が中空な茎をもつ植物の共通点について考えたことがありませんでした。

このご質問を機会に茎が中空な植物を抜き出してみて何か共通なことがあるか探してみましたが、はっきりした共通点を見つけることができませんでした。ただ、単子葉植物のイネ科の植物は中空茎をもつものがかなりたくさんあります。タケ、ササ類、イネ、ムギはその代表ですね。イネ、ムギなどの作物を見ると細い茎の先端に重い果実(穂)を支えながらもっとも効率よく資材を使用するために中空茎になっているとの理解もできますが、その他の野生のイネ科植物では果実がそれ程重くないものがたくさんあります。双子葉植物を見てみますと、身近な植物の中ではキンポウゲ科(ウマノアシガタ、キツネノボタン、タガラシなど)、キク科(ハルジオン、ノゲシ、オニノゲシ、ノボロギク、ダリア、タンポポなど)の中に中空茎のものが多く見られます。その他、セリ科(ウド、ドクゼリ)、タデ科(イタドリ)、アブラナ科(スカシタゴボウ)、ケシ科(タケニグサ)、シソ科(オドリコソウ)、スイカズラ科(スイカズラ)、キョウチクトウ科(ツルニチニチソウ)、モクセイ科(レンギョウ)、ユキノシタ科(ウツギ)、マメ科(クサネム)などといろいろな科の中に中空茎植物があります。ハルジオンとヒメジョオン、ミチノクフクジュソウとフクジュソウのようにどちらも同じ属で近縁関係にあるものでも一方(それぞれ前者)は中空茎、他方(後者)は髄が詰まっていると言ったものもあります。茎ばかりでなく、葉柄が中空になっている植物もあります。フキ(キク科)、ゴボウ(キク科)、ホテイアオイ(ミズアオイ科)、ニリンソウ(キンポウゲ科)、ズッキーニ(ウリ科)などです。


ごく限られた範囲でのこのような状況を見ても、生理的にも生態的にも形態的にも中空茎をもつ植物に共通点があるとは言えません。中空茎ははじめから茎が中空にできてくるのではなく、若い茎では髄が詰まっています。成熟がすすむにつれて髄組織が崩壊して中空になりますのでそれぞれの種における遺伝子の働きの違いによって中空になったりならなかったりするものと言えます。言い換えるなら、ここにも種の多様性が現れていることになります。



茎の断面の形には円、四角、三角といろいろありますが、いろいろな方向からの力に対する抵抗力(撓みに抵抗する力)は断面の周辺に近くなるほど多く分布していて、中央部分はあまり大きな抵抗力を発生していません。そのため、同じ断面積であるならば、詰まった円筒茎でも中空の茎でも外からの力に対する抵抗力はあまり変化しません。植物の側から見れば、中空にすることは、そこにあるべき組織を保持するためのエネルギーを使わなくてすむので経済的と言えます。

JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-08-19