一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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かいわれをジュースで育てる

質問者:   中学生   ささっこ
登録番号2287   登録日:2010-08-20
かいわれ大根をジュースで育てたら色や味はつくのかということが気になって、次の3つで育ててみました。
・100%オレンジジュース・100%グレープジュース・無塩トマトジュース
キッチンペーパーを3枚ぐらい重ねて、ざるに入れて10個程の種を敷いて育てました。腐ると思ったので、冷蔵庫の中で育てました。そして、毎日霧吹きでそれぞれのジュースをあげました。

しかし、トマトジュースは少し割れたんですが、オレンジとグレープジュースは全く変化せず腐ってしまいました。
なぜ、こうなったんでしょうか?教えてください。
ささっこ さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
色や味のついた液体で植物を育てたら、その色や味のついた植物ができるのではないかと考えたのですね。ちょっと考え過ぎかなと思います。切り取ったアブラナの切り口を食紅液につけると茎が赤くなることはよく観察されますが、根から着色液が吸収されて植物体に色がつくことはありません。
さて、ご質問は種子が発芽するときに3種類の果汁(ジュース)がどんな働きをするかということになります。まず、オレンジジュース、グレープジュース、無塩トマトジュースは市販のものを使われたと思いますが、それらの成分を比較したでしょうか。果汁にはかなりの量の糖、酸、塩類のほか特徴となる色素、香り成分が含まれています。種子の発芽は水だけで十分ですので、これらの余分の果汁成分が影響することを考える必要があります。果汁メーカーによって多少の違いがありますが、オレンジジュース、グレープジュースには9%から13%程度、トマトジュースでは5〜8%の糖分が含まれています。種子が発芽するためには外から水を吸収しなければなりません。種子の細胞の中にも糖や塩分が含まれていて平均の全濃度は3〜5%の糖分に相当します。このような種子(細胞)の外側に100%果汁(約10%の糖液)を与えたことになります。すると、細胞の外側にある細胞膜を境として一方に3〜5%の糖液、他方に10%ほどの糖液がある状態となります。このような状態ですと、水は、薄い糖液側から濃い糖液側へ移動してしまいます(膜の両側の濃度が同じようになるように水が移動する、と考えてよいとおもいます)。つまり、細胞(種子)の中から水が外側へ出てしまうことになり種子は水不足で死んでしまうことになります。「トマトジュースが少しわれた」のは使ったトマトジュースの糖濃度が5%かそれよりわずかに低かったので、ほんのわずか水を吸うことができて少しだけ発芽しかかったけれども、元気に成長するほどには水を吸うことができなかったと解釈できます。使った果汁を、それぞれ2倍、3倍に水で薄めたものでもう一度実験してみてください。3種の果汁液で、種子の発芽、生長に少しでも違いが出たら、それはどうしてか、と次の実験を考えることができます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-08-23