一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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玉ねぎの色素について

質問者:   中学生   WS
登録番号2289   登録日:2010-08-22
玉ねぎの染色実験を行ってみました。
玉ねぎの外皮にはケルセチンという色素があって、それで染色されることはわかっていますが、この実験で、玉ねぎの身を5日間日光にあてると、黄色みがかった緑色になったので、それで染色をしてみました。すると、薄い黄色に染色されました。それを、ミョウバンで媒染してみるとやや黄色身が鮮やかになりました。これもケルセチンによるものでしょうか。違うのであれば、どのような色素による染色なのでしょうか。
WS様

質問コーナーへ再度ご来訪を歓迎いたします。タマネギにかぎらずいろいろな植物の天然色素を使っての染色、草木染めをする場合、色素と布繊維との結びつきをよくするために媒染剤(液)を用います。明礬液は一般的によく使われる媒染液です。明礬はAl(アルミニュウム)を含む金属塩で、このAlが色素分子の酸素原子と結合して、色素と布の結びつきを促します。ケルセチンはポリフェノールの一種で、分子の中に水酸基(OH)を多く含んでいますので、それと金属原子との間で結合が起こるのです。Al以外にも銅や鉄やスズ等の金属塩でも使えます。発色は異なります。ケルセチンは明礬で媒染することによって鮮やかな黄色になります。鉄を含む媒染剤を使うと茶色になります。媒染はまず布を明礬液に浸けて、それから色素液につけるのが普通です。ところで、タマネギの鬼皮(この部分に多量のケルセチンがふくまれる)を除去して内側の鱗葉を陽にさらしたとのことですが、そうすると、当然のことながら、タマネギは葉っぱですから、葉緑素を作り能力を持っているので、緑化がみられます。ただ、乾燥も進み、最終的には最初の鬼皮と同じになるはずです。でも途中ですと、緑と黄色が混じっても不思議ありませんですね。このような状態の鱗葉を使えば、すくない量のケルセチンで染色する事になります。ケルセチンを含むタマネギを使う草木染めをはじめ、各種の材料や媒染剤の使い方などについては、書物でもWEBの上でもありあまるほどの資料が得られますので、参考にして下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2010-08-23