一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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1本だけ葯のないおしべがあるのはなぜ?

質問者:   中学生   鈴木くん★
登録番号2297   登録日:2010-08-28
ノウゼンカズラやサルスベリの花のおしべの数を調べていたら、
どちらも1本だけ葯のない貧弱なおしべがあるんです(・д・川)
なぜでしょうかぁ??

また、サルスベリの6枚の花びらの並びに1本おしべのようなものが、
あるのはなぜですかぁ??
鈴木くん★

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。

お家に庭にサルスベリやノウゼンカズラの花が咲いているのですか。夏の樹の花の中ではよくめだちますね。さて、質問の内容ですが、これだけだとなんともお答えできません。写真があって実際にどうなっているのかが分からないと判断ができないのです。しかし、ここではサルスベリやノウゼンカズラの花の雄しべのことを説明しますので、それを参考にして下さい。

サルスベリの花をみると花びらは6〜8枚あって、中央に黄色の部分が在ります。これが雄しべで、黄色は葯の色です。更に、長く突き出た糸状のものが7、8本あります。このうち中央から出ているのは雌しべで先端は柱頭です。その他は全部雄しべで中央の黄色い葯をつけた雄しべの外側からでています。これらの長い雄しべの葯は紫いろです。このように、サルスベリの花では長短2種類の雄しべがあるのです。
なぜそうなっているかというと、受粉が効果的に行われるためでしょう。サルスベリの花は虫媒花で、ハチやアブの仲間が花粉を運びます。しかし、中央の黄色い葯の花粉は受粉用の花粉ではなくて、昆虫の食餌となります。受粉用の花粉は長い雄しべの葯のものが使われます。中央の雄しべの葯は上を向いていて、昆虫を呼び込みます。昆虫は夢中でこの花粉を集めている間に、長い雄しべの下向きに着いている葯に背中をこすり、その花粉を背中につけます。同時に、やはり下向きについている雌しべの柱頭に背中のの花粉がこすりつくことになるのです。受粉が終わると長い雄しべは内側に巻き込まれます。ノウゼンカズラには長短それぞれ2本の雄しべがあります。こちらの方も多分受粉に関係してそのような構造になっているのでしょう。一本だけ葯のない貧弱な雄しべというのは雌しべではないですか。また、花びらの並びにーーーーというのはその雄しべの根元はどこから出ているのか調べてみましたか。植物図鑑等を調べて、よく観察を深めて下さい。


JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2010-08-30