一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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組織培養の発根促進について

質問者:   一般   sato
登録番号2299   登録日:2010-08-30
ジャガイモの組織培養をしています。具体的にいうと茎頂培養して生長した培養苗を節を含めた形で節間で分割する方法(以後、節分割という)で苗を増殖しています。
培地はMS培地(ショ糖濃度1〜3%)、支持体は液体培地の場合はキムワイプ、固形培地の場合はゲルライトを使用しています。既存品種の培養変異を起こさないようにホルモンフリーです。
様々な品種を節分割していると発根せずにシュートが伸長してる場合がありますが、これを器外に移植しても活着しない場合が多く困っています。
そこで少しでも発根を促進するためにどのような方法があるかご教授頂ければと思います。できましたらホルモンを使用しない方法が最良です。
自分ではショ糖濃度を上げることで発根が良好になることは実感していますが、その弊害で茎葉にカルスが形成され、増殖の妨げとなっています。
それでは、よろしくお願いします。
sato さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問で求められている回答はまさに試験研究によってのみ得られるものです。特定材料の特定条件のもとで必要と考える結果を得る操作は、既存の知識ばかりでなく、その折々の試行を繰り返して見つけだすものです。そのため、この質問コーナーでお答えできることの範囲を超えています。
ご質問の中で気のついた点をあげてみます。ご参考になればと思います。「培養変異を避けるためにホルモンフリーとしたい」と述べておられますが、培養変異は植物組織を脱分化状態(カルス)で培養している間に生じるものです。しかし、satoさんが行われていることは茎頂培養(器官培養であって脱分化状態を経ていないはず)でして、茎頂分裂組織自体の発生能力を利用しています。その結果できたシュートから発根(不定根)させようとするものでその際に成長調節剤を使用しても培養変異を生ずるとは考えられません。不定根の発生はオーキシンが重要な働きをしていると信じられていますので、葉(オーキシンの生成源)のない茎切片に不定根を形成させることは至難のことと思います。オーキシンに属する安定した発根促進剤なるものが市販され、それなりの効果を上げています。しかし、不定根の発生能力は同種の植物でも品種によって著しい差があるものです。たとえ発根促進剤を使用しても発根を得られない場合は少なくありません。その原因を探りだし、目的を達成することが研究の1つと思います。
ジャガイモは世界的に重要な作物で培養を基盤として膨大な研究・試験成果があります(ご存じと思いますがPotato Researchという学術雑誌すら発行されています)。ウイルスフリー系統を得るため、あるいは最近はあまり話題になりませんがマイクロチュバー作成の開発研究において培養に関する研究成果はかなりありますので、それらを徹底的に調査していけば何らかの手がかりが得られるかもしれません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-08-31
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