質問者:
小学生
syunpon
登録番号2304
登録日:2010-09-06
2008年8月に登録登録1727 『同じアサガオの種なのになぜ白色が咲くのか』を質問させていただいたsyunponです。みんなのひろば
トランスポゾンはいつ動くのか
先生のご回答でトランスポゾンによる動きで白色のアサガオが咲くことがわかりました。そしてアドバイスをもとに毎年その種をまき続け元の色のに出会えるのをたのしみにしていますが今だ白色のアサガオの観察を続けています。地元の科学館の学術員の先生から白は白、色は色で隔離しながら育てる必要がある、とアドバイスをいただき育てています。元の色のアサガオに出会えるには何年かかるかわかりませんが、そのトランスポゾンがどの時点で動くのか知りたいのです。①つぼみになる前の時②開花する前の時③種になる時④種になってから⑤発芽する直前など予測しています。今までの観察では色のついたアサガオは発芽後の茎が赤っぽくなっていると色がある花が咲き、黄緑色の茎だと白色の花が咲くところまで観察しています。
よろしくお願いします。
syunpon君、
登録番号1727の回答を読んで頂き、白いアサガオの子孫を調べてみたのですね。研究熱心で大変素晴らしいと思います。
登録番号1727をまとめてみますと、次のようになった訳ですね。
1年目赤紫
2年目赤紫、青紫
3年目赤紫、赤紫、青紫、白色、青紫の周りだけ白色
登録番号1727では、交配の可能性と、トランスポゾンが原因となった可能性を答えており、後者の可能性が高いのではないかと答えています。今回は、アサガオの専門家の仁田坂先生(九州大学)にも相談してみました。結論としては、1年目に咲いた赤紫の花に、白いアサガオの花粉が付いた可能性が高いです。白のアサガオは、虫が花粉を運んでこない限り、何代先も白である可能性が高いと思います。
その理由を説明してみます。高校の生物を習っていないと理解出来ないのですが、説明しておきますので、わかるようになれば読み直して下さい。
トランスポゾンが色素合成系の遺伝子に入りますと、その遺伝子が働かなくなり、色素が作れなくなります。トランスポゾンについては、登録番号2186で説明をしています。トランスポゾンは動く遺伝子ですので、トランスポゾンが出て行くと再び色素を作るようになります。斑点や、しまのように色がついているアサガオを見たことがあるでしょうか?白い花において、色素合成系遺伝子からトランスポゾンが抜け出して、再び色素を作るようになったわけです。トランスポゾンが抜けた後に増殖した細胞の集まりが、色のついた場所(セクター)です。トランスポゾンの種類や、トランスポゾンがどこに入っているかにもよりますが、トランスポゾンは様々な時期に動きます。花粉や卵を作る細胞でこれが起きれば、次の世代は全体に色がついた花ができます。しかし、特定の遺伝子にトランスポゾンが入り込むこと(この場合、白い花を作り出すこと)は、ずっと珍しいのです。なぜかといいますと、植物は遺伝子を3万個ぐらい持っています。そのうちの何個かが、色素を合成するための遺伝子です。3万個の遺伝子のうち、たまたま色素を合成する遺伝子に入る確率は低いのです。さらに、植物は、動物と同様、同じ遺伝子を2個づつ(両親由来)持っています。そこで、両方の遺伝子にトランスポゾンが入らないと白くならないのです。そういった植物がたまたま見つかると、育種家は大切に育てるのです。ということで、トランスポゾンの可能性は低いと思います。おそらく、白い花のアサガオの花粉が飛んで来たのだと思います。
最も可能性が高いのは、次のようなことかと思います。アサガオでは、赤い色素(赤紫)を作るのに必要な遺伝子がいくつかあります。ここではA遺伝子ということにしておきましょう。Aがつぶれていると、白色になります。赤色の色素にPという遺伝子が働くと青紫になります。Pがつぶれると赤紫色の花になります。AもPも正常なものは青紫の花を咲かせます。つぶれた遺伝子は普通小文字で書きます。また、A(またはa)、P(またはp)も2つずつあります。
(初代)
AApp(赤紫)
(2代目)
ここに、aaPP(白色)の作った花粉が交雑したとすると、できた種子はAaPp (青紫)。一方、自家受粉したものが、AApp(赤紫)
(3代目)
2代目の青紫(AaPp)が自家受粉したものは:
白:aappまたはaaPpまたはaaPP : 全体の1/4
青紫:aAPPまたはAAPP またはaAPpまたはAAPp : 全体の12/16
赤 紫: AAppまたはAapp : 全体の3/16
の割合で分離すると思います。
青紫の周りだけ白色」も、昆虫がどこかのアサガオから花粉を運んで来たものと思われます。その仕組みについては、九州大学の仁田坂先生から、以下のように補足頂きました。この仕組みはさらに難しく、大学レベルの生物学を学ばないと理解出来ませんが、紹介しておきます。また、仁田坂先生が作られましたアサガオのwebページも紹介しておきます(http://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/)。
(仁田坂先生より)3年目は青紫の周りだけ白色というのは、覆輪(Margined; 遺伝子記号Mr)のことだと思います。これは優性変異ですし、園芸品種で持っているものが多いため、少なくとも2年目に覆輪を持つ品種と、赤紫または青紫の花と自然交雑を起こしたことが考えられます。覆輪の原因遺伝子は既に基生研のグループによって解析されておりまして、一つの白花の原因遺伝子であるDFR-Bですが、この配列が再配列を起こしているため、dsRNAが作られ、野生型の mRNAが分解されるRNAi様の現象が起こるためだろうと考えられています(そのため優性に出る)。ただし、なぜ花弁の縁だけで、DFR-Bの発現が抑えられる(mRNAが分解される)のかはよくわかりません。
仁田坂 英二(九州大学)
登録番号1727の回答を読んで頂き、白いアサガオの子孫を調べてみたのですね。研究熱心で大変素晴らしいと思います。
登録番号1727をまとめてみますと、次のようになった訳ですね。
1年目赤紫
2年目赤紫、青紫
3年目赤紫、赤紫、青紫、白色、青紫の周りだけ白色
登録番号1727では、交配の可能性と、トランスポゾンが原因となった可能性を答えており、後者の可能性が高いのではないかと答えています。今回は、アサガオの専門家の仁田坂先生(九州大学)にも相談してみました。結論としては、1年目に咲いた赤紫の花に、白いアサガオの花粉が付いた可能性が高いです。白のアサガオは、虫が花粉を運んでこない限り、何代先も白である可能性が高いと思います。
その理由を説明してみます。高校の生物を習っていないと理解出来ないのですが、説明しておきますので、わかるようになれば読み直して下さい。
トランスポゾンが色素合成系の遺伝子に入りますと、その遺伝子が働かなくなり、色素が作れなくなります。トランスポゾンについては、登録番号2186で説明をしています。トランスポゾンは動く遺伝子ですので、トランスポゾンが出て行くと再び色素を作るようになります。斑点や、しまのように色がついているアサガオを見たことがあるでしょうか?白い花において、色素合成系遺伝子からトランスポゾンが抜け出して、再び色素を作るようになったわけです。トランスポゾンが抜けた後に増殖した細胞の集まりが、色のついた場所(セクター)です。トランスポゾンの種類や、トランスポゾンがどこに入っているかにもよりますが、トランスポゾンは様々な時期に動きます。花粉や卵を作る細胞でこれが起きれば、次の世代は全体に色がついた花ができます。しかし、特定の遺伝子にトランスポゾンが入り込むこと(この場合、白い花を作り出すこと)は、ずっと珍しいのです。なぜかといいますと、植物は遺伝子を3万個ぐらい持っています。そのうちの何個かが、色素を合成するための遺伝子です。3万個の遺伝子のうち、たまたま色素を合成する遺伝子に入る確率は低いのです。さらに、植物は、動物と同様、同じ遺伝子を2個づつ(両親由来)持っています。そこで、両方の遺伝子にトランスポゾンが入らないと白くならないのです。そういった植物がたまたま見つかると、育種家は大切に育てるのです。ということで、トランスポゾンの可能性は低いと思います。おそらく、白い花のアサガオの花粉が飛んで来たのだと思います。
最も可能性が高いのは、次のようなことかと思います。アサガオでは、赤い色素(赤紫)を作るのに必要な遺伝子がいくつかあります。ここではA遺伝子ということにしておきましょう。Aがつぶれていると、白色になります。赤色の色素にPという遺伝子が働くと青紫になります。Pがつぶれると赤紫色の花になります。AもPも正常なものは青紫の花を咲かせます。つぶれた遺伝子は普通小文字で書きます。また、A(またはa)、P(またはp)も2つずつあります。
(初代)
AApp(赤紫)
(2代目)
ここに、aaPP(白色)の作った花粉が交雑したとすると、できた種子はAaPp (青紫)。一方、自家受粉したものが、AApp(赤紫)
(3代目)
2代目の青紫(AaPp)が自家受粉したものは:
白:aappまたはaaPpまたはaaPP : 全体の1/4
青紫:aAPPまたはAAPP またはaAPpまたはAAPp : 全体の12/16
赤 紫: AAppまたはAapp : 全体の3/16
の割合で分離すると思います。
青紫の周りだけ白色」も、昆虫がどこかのアサガオから花粉を運んで来たものと思われます。その仕組みについては、九州大学の仁田坂先生から、以下のように補足頂きました。この仕組みはさらに難しく、大学レベルの生物学を学ばないと理解出来ませんが、紹介しておきます。また、仁田坂先生が作られましたアサガオのwebページも紹介しておきます(http://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/)。
(仁田坂先生より)3年目は青紫の周りだけ白色というのは、覆輪(Margined; 遺伝子記号Mr)のことだと思います。これは優性変異ですし、園芸品種で持っているものが多いため、少なくとも2年目に覆輪を持つ品種と、赤紫または青紫の花と自然交雑を起こしたことが考えられます。覆輪の原因遺伝子は既に基生研のグループによって解析されておりまして、一つの白花の原因遺伝子であるDFR-Bですが、この配列が再配列を起こしているため、dsRNAが作られ、野生型の mRNAが分解されるRNAi様の現象が起こるためだろうと考えられています(そのため優性に出る)。ただし、なぜ花弁の縁だけで、DFR-Bの発現が抑えられる(mRNAが分解される)のかはよくわかりません。
仁田坂 英二(九州大学)
大阪大学
広報委員長 柿本 辰男
回答日:2012-08-25
広報委員長 柿本 辰男
回答日:2012-08-25