一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ねぎの葉

質問者:   大学生   79
登録番号2315   登録日:2010-09-28
ねぎの葉は外観上葉の上面・下面を区別することはできません。こうのような針状葉の表裏を区別する方法はありますか?
79さま

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。ネギやタマネギの葉の裏表は、葉の形成過程の観察を通して明らかにされています。葉は茎の先端(茎頂と云います)で作られます。茎頂はドーム型をしていますが、ドームの先端から少し離れた部分がふくらみ、それが平面状に伸び葉が形成されます。こうして出来た葉のドームの先端側が葉の表に、その反対側が裏になります。ネギやタマネギでも葉は普通の葉と同じように出来ます。ですから、葉の出来始めにはネギやタマネギの葉にも裏表があります。ところが、普通の葉の場合、裏も表も同じように伸びるのですが、ネギやタマネギの場合、裏表を保ったまま、少し伸びた後で、裏側の先端に近い部分が盛り上がって伸び出し、私たちが見ているような葉になります。ですから、私たちが見ているネギやタマネギの葉はすべて裏ということになります。でも、表もちゃんとあります。ネギやタマネギを輪切りにしてみましょう。同心円状にリング状の葉が並んでいるのが分かると思います。リング状の葉の内側が表で、外側が裏です。このように、葉の裏表は葉の形成過程を観察することにより明らかにすることができますが、分子生物学の進歩により、最近では、葉の表側に特異的に発現される遺伝子、裏側に特異的に発現される遺伝子が同定さており、そうした遺伝子の発現パターンによって容易に判断することが出来るようになっています。



以下、回答後にやりとりがありましたので、参考のため、載せておきます。

柴岡先生:ネギの葉の基部には隙間は残るのでしょうか? 柿本 辰男(広報委員長)

あまり詳しく書くと、却って混乱するかと思い省きましたが、葉の裏側が伸びて葉身になりますが、葉の基部では葉の両方の縁が茎頂を取り囲むように伸び、先端に近い部分をのこして癒合し、先端近くに小さな穴があいた円錐形のようなものが出来ます。穴の上の部分が伸びて葉身になるのですが、穴の下の部分も伸びて葉鞘になります。シロネギの食べている部分です。次の葉はこの円錐形の前の葉の中で発達します。次の葉の葉身は、前の葉の小さな穴から出てきます。ネギは1/2葉序ですので、これを繰り返し、市販のような形になります。前の葉の隙間の中に次の葉が詰まってくるので、隙間はなくなります。タマネギのタマはネギの葉鞘に当たる部分が肥大したものです。先に出来た葉の葉鞘の中に、次の葉の葉鞘が詰まっているのがよくわかると思います。


柴岡先生:タマネギのタマでは葉身は小さく、穴から頭を出さないということでしょうか?  柿本 辰男(広報委員長)

タマネギは短日条件下では前の葉の穴から出た葉身部分が伸びており、穴の下の葉鞘部分も縦方向に伸長しているのですが、長日条件になると(FTが関係していると思って、昔から島本さんに調べて呉れと頼んでいるのですが、忙しいらしくやってくれません)、葉身部分が伸長しなくなり、葉鞘部分が肥大し始めタマが形成されます。市販されているタマネギには葉身部分を持つ葉の葉鞘部分が肥大したものと、葉身が伸長せず、葉鞘が肥大したものが含まれています。更に追加すると、三田君は縦方向に伸長している葉鞘では細胞質表層微小管が軸と直角に並んでいるのに、肥大に伴って、細胞質表層微小管が消失することを明らかにしています。

柴岡 弘郎(JSPPサイエンスアドバイザー)
柴岡 弘郎(JSPPサイエンスアドバイザー)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2010-10-07
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