質問者:
小学生
さとう
登録番号2317
登録日:2010-10-04
宜しくお願いします苔のふえかた
僕は夏休みの自由研究で苔を観察しました
図鑑で、苔には雄株と雌株があり、そこで造った精子と卵子が受精して
胞子ができ、増えることがわかりました
しかし「無性芽によっても増える」とありました
僕は無性芽で増えることが出来るのなら、雄株と雌株はいらないんじゃないかと思いました
1、無性芽で増えることが出来るのに、どうして雄株と雌株があるんですか?
2、苔は、ずっと何年も何十年も無性芽で増え続けることが出来るんですか?
さとうさん
遅くなって申し訳ありません。遅くなったのは、私のミスです。
さて、コケの特徴を生かした素晴らしい研究を展開されている京都大学の河内先生に回答を頂きました。また、登録番号2026の回答も参考にして下さい。
河内先生からの回答:
コケ植物は、苔(タイ)類、蘚(セン)類、ツノゴケ類があり、雌株と雄株があることや無性芽で増えることは、コケ植物のすべての種(シュ)に当てはまることではありません。雌雄同株のコケや無性芽を作らないコケもいます。ここでは、質問にある増殖形式を取るゼニゴケを例に解説してみましょう。少し難しい言葉も使いますが、ゆっくりと考えながら読んでみてください。
ゼニゴケの無性芽は、葉状体の表面に杯状体と呼ばれるカップ状の構造ができ、その中に作られます。おもしろいことに、無性芽は杯状体の底にある表面の1細胞が伸長し、更に細胞分裂をして形成されてきます。無性芽は親の体の一部から生まれたものです。つまり、無性芽がもつ遺伝子は、無性芽を作ったもとの植物と遺伝的にまったく同じものなのです(クローンと呼ばれます)。雌雄の性が関わらない生殖形式なので、無性生殖とも呼ばれます。ゼニゴケは無性芽を作り、急激に増殖するという特徴があるため、除去するのが非常に困難です。ゼニゴケの群落には雄だけ、あるいは雌だけしか観察されないことも多くあります。普通に野外で見られるゼニゴケの多くは無性芽で増えたものと考えられます。
それに対して、胞子は受精に由来します。胞子からうまれた個体は、父親と母親の遺伝子を半分ずつ受けついていますので、遺伝的に親とはまったく同じものではありません。このような生殖は、雌雄の性の存在が基本となっていますので、有性生殖と呼ばれています。性があることがなぜ優れているかは、生物学では大きなテーマです。遺伝子の組み合わせによって遺伝的な多様性が生まれて、環境変動や病気に強い個体が生き残ることが期待できると考えられています。その一方で、雌雄異株植物における有性生殖は雌雄が周りにいないと増殖することができないという不利な点もありますので無性芽による増殖方法も使っているのでしょう。これが、一番目の質問の回答になると思います。
回答者の研究室ではゼニゴケを実験に利用しています。無性芽で10年以上維持されたものです。ちなみに、無性芽は、光合成を盛んに行っている時や外から糖を与えた時に多く形成されます。つまり、ゼニゴケにとって快適な環境で急激に増殖するのに適した方法のように思えます。一方、有性生殖も、環境の影響を強く受けます。我々が蛍光灯を使ってゼニゴケを育てているときには、ゼニゴケは旺盛に成長し、無性芽を作るのですが、雌雄の生殖組織はまったく形成されません。しかし、蛍光灯には含まれていない遠赤色光(赤い光よりも少し波長の長い光)を与えることで、雌器托、雄器托と呼ばれる傘状の生殖器官を形成するようになります。この光環境は、ゼニゴケが他の植物の陰になったと勘違いしたと感じていると解釈できます。他の植物の日陰から逃げる戦略としても、風に乗って長距離移動することができる胞子を形成する有性生殖は有効なのかもしれません。ゼニゴケは、有性生殖と無性生殖を巧みに使い分けながら、生き延びてきたようです。
長い回答になりました。まとめると、1.胞子と無性芽の増殖にはそれぞれの利点があるから、2.はい、可能です、という回答となります。
有性生殖・無性生殖については、この質問コーナーでも何回か取り上げられていますので、キーワードで検索して読んでみてください。
河内 孝之(京都大学生命科学研究科)
遅くなって申し訳ありません。遅くなったのは、私のミスです。
さて、コケの特徴を生かした素晴らしい研究を展開されている京都大学の河内先生に回答を頂きました。また、登録番号2026の回答も参考にして下さい。
河内先生からの回答:
コケ植物は、苔(タイ)類、蘚(セン)類、ツノゴケ類があり、雌株と雄株があることや無性芽で増えることは、コケ植物のすべての種(シュ)に当てはまることではありません。雌雄同株のコケや無性芽を作らないコケもいます。ここでは、質問にある増殖形式を取るゼニゴケを例に解説してみましょう。少し難しい言葉も使いますが、ゆっくりと考えながら読んでみてください。
ゼニゴケの無性芽は、葉状体の表面に杯状体と呼ばれるカップ状の構造ができ、その中に作られます。おもしろいことに、無性芽は杯状体の底にある表面の1細胞が伸長し、更に細胞分裂をして形成されてきます。無性芽は親の体の一部から生まれたものです。つまり、無性芽がもつ遺伝子は、無性芽を作ったもとの植物と遺伝的にまったく同じものなのです(クローンと呼ばれます)。雌雄の性が関わらない生殖形式なので、無性生殖とも呼ばれます。ゼニゴケは無性芽を作り、急激に増殖するという特徴があるため、除去するのが非常に困難です。ゼニゴケの群落には雄だけ、あるいは雌だけしか観察されないことも多くあります。普通に野外で見られるゼニゴケの多くは無性芽で増えたものと考えられます。
それに対して、胞子は受精に由来します。胞子からうまれた個体は、父親と母親の遺伝子を半分ずつ受けついていますので、遺伝的に親とはまったく同じものではありません。このような生殖は、雌雄の性の存在が基本となっていますので、有性生殖と呼ばれています。性があることがなぜ優れているかは、生物学では大きなテーマです。遺伝子の組み合わせによって遺伝的な多様性が生まれて、環境変動や病気に強い個体が生き残ることが期待できると考えられています。その一方で、雌雄異株植物における有性生殖は雌雄が周りにいないと増殖することができないという不利な点もありますので無性芽による増殖方法も使っているのでしょう。これが、一番目の質問の回答になると思います。
回答者の研究室ではゼニゴケを実験に利用しています。無性芽で10年以上維持されたものです。ちなみに、無性芽は、光合成を盛んに行っている時や外から糖を与えた時に多く形成されます。つまり、ゼニゴケにとって快適な環境で急激に増殖するのに適した方法のように思えます。一方、有性生殖も、環境の影響を強く受けます。我々が蛍光灯を使ってゼニゴケを育てているときには、ゼニゴケは旺盛に成長し、無性芽を作るのですが、雌雄の生殖組織はまったく形成されません。しかし、蛍光灯には含まれていない遠赤色光(赤い光よりも少し波長の長い光)を与えることで、雌器托、雄器托と呼ばれる傘状の生殖器官を形成するようになります。この光環境は、ゼニゴケが他の植物の陰になったと勘違いしたと感じていると解釈できます。他の植物の日陰から逃げる戦略としても、風に乗って長距離移動することができる胞子を形成する有性生殖は有効なのかもしれません。ゼニゴケは、有性生殖と無性生殖を巧みに使い分けながら、生き延びてきたようです。
長い回答になりました。まとめると、1.胞子と無性芽の増殖にはそれぞれの利点があるから、2.はい、可能です、という回答となります。
有性生殖・無性生殖については、この質問コーナーでも何回か取り上げられていますので、キーワードで検索して読んでみてください。
河内 孝之(京都大学生命科学研究科)
広報委員長
柿本 辰男
回答日:2012-07-19
柿本 辰男
回答日:2012-07-19