一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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葉の透過光測定

質問者:   教員   ハッパ
登録番号2321   登録日:2010-10-08
1855の質問「どうして植物は緑色光を使わないのか?」で、実際に植物は緑色光も海綿状組織で利用していることを知りました。実際に葉の光透過率(吸収率)を調べるにはどのような方法を用いるのでしょうか?分光光度計に葉を直接入れて測定するのでしょうか。
ハッパ 様

 分光光度計は基本的には、光が透過しても散乱することのない、透明な溶液の、各波長の光の吸収を測定するための装置です。 葉を(80%アセトン+20% 水)、または(80%エタノール+20%水)ですりつぶし、遠心分離するか、ろ過によって透明にした緑色の抽出液を分光器で吸収スペクトルを測定すれば、葉に含まれている主な色素であるクロロフィール、カロチノイドによってどの波長の光がよく吸収されるかを正確に測定できます。これを吸収スペクトルとよんでいますが、上のような葉の透明な有機溶媒抽出液では,おおよそ400-500 nmの青色の光と、600-700 nmの赤色の光がよく吸収され、500-600 nmの緑に相当する波長の光があまり吸収されないことがわかります。

 しかし、葉の組織ではこれらの色素は葉緑体の中にあり、葉緑体は葉の表側の柵状組織、裏側の海綿状組織の細胞の中にあります。そのため葉緑体の中の色素はアセトン、エタノールの抽出液のように透明な液の中にあるのではなく、これらの色素に測定光が到着するまでに周りが透明な液体ではないために散乱し、またこれらの色素に吸収されなかった光も散乱するため、測定光が吸収できなかった光も正確に測定できません。そのため、普通の分光器の試料セルを入れるところに(ガラスに葉を張り付けて)おいて吸収スペクトルを測定しても、透明な液体試料の様には正確に測定できません。

 分光器を用いできるだけ正確に吸収スペクトルを測定するためには、光の散乱をできるだけ抑制することが必要です。そのために、葉を張り付けたガラス板を、普通の試料を測定する位置ではなく、できるだけ光の測定検出器(電子増倍管、または、フォトダイオードなど)に近い位置に置くことが必要です。これをさらに正確にするために、すりガラス(オパールグラス)を試料と光の測定検出器の間におく方法もありますが、おおよその傾向を見るためだけであれば特に必要ではないでしょう。

JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2010-10-14
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