一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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白花

質問者:   一般   りんご
登録番号2322   登録日:2010-10-08
野山を歩いて花を見るのが好きです。
たまに白花を見かけます。ツユクサ・アザミ・ミズヒキなど、周りは普通の色なのに1本だけ白いのがあるのです。
なぜ白くなるのでしょう?
色素ができないのですか?
種ができるのでしょうか?
その個体だけで終わるのでしょうか?
遺伝するのでしょうか?
りんご様
 みんなの広場へのご質問ありがとうござました。頂いたご質問の回答を花の色の研究をなさっておられる、お茶の水大学の作田正明先生にお願いいたしましたところ、以下のような嬉しい回答をお寄せ下さいました。お役に立つと思いますので、勉強して下さい。




りんご さま

みんなの広場 質問コーナーにようこそ。熱かった夏もようやく終わり、秋を彩る花々が咲き始めましたね。もう少したつと、紅葉が山々を覆い美しい晩秋の日本の風景が私達の目を楽しませてくれます。こういった花の色や果実、紅葉の色に関する研究は、百年に渡る歴史があり、日本の得意とする研究分野のひとつなのです。たとえば、なすの青い色素にはナスニン、梅干しの赤紫蘇の色素にはシソニンといった日本発の名前がつけられ世界中で使われていますし、カエデの紅葉の色素の構造も日本で決められました。

高等植物の花や果実、紅葉などに見られる赤や紫、青といった色のほとんどはアントシアニンと呼ばれる色素により発色されています。このアントシアニンの合成に関しては、大変よく研究されており、現在ではその合成に関わる酵素の遺伝子のほとんどが明らかにされ、これらの遺伝子の発現のスイッチのオン、オフの仕組みに至るまで研究が進められています。りんごさんが見かけた白花はこういったアントシアニン合成系の遺伝子、またはこれら遺伝子の発現を調節している部分に変異が起こり、アントシアニンが合成できなくなった結果白くなったのだと思われます。植物の大きさや形は野生のものと変わらず、花の色だけが白くなるようなアントシアニン合成の変異株の多くは、種もでき子孫を残すこともできます。遺伝もしますが変異により出てくる形質は多くの場合劣性で、周囲の色のついた花をつける植物と交配した場合、次の世代では見かけ上花は普通に色をつけます。しかしこういった白花のポテンシャルを持つ見かけ上色がある花どうしが交配すると、メンデルの法則に従い白い花をつけるものもまた現れてきます。こういった現象は、新しい花色の植物の育種のために応用されており、変異を利用した新品種の開発は園芸において有効な手法の一つとなっています。



作田正明(お茶の水女子大学大学院 生命科学分野)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡弘郎
回答日:2010-10-15
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