一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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かぼちゃの中の種が発芽していました。なぜですか?

質問者:   一般   ウメ
登録番号2324   登録日:2010-10-15
ETかぼちゃを半分に切ったところ、中の種が発芽しており、
太いもやしのようになっていました。
かぼちゃのワタには発芽抑制成分が含まれているので、
中の種が発芽することはないと聞きましたが、
なぜこのような状態になったのでしょう?
かぼちゃの中で発芽に適する環境が作られてしまったということでしょうか?
ご説明をお願い致します。
ウメ さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は野菜茶業研究所の小原隆由先生に伺いました。小原先生は関連研究者からも情報を集めてくださり、次のような回答をお寄せくださいました。今年の高温続きが原因の1つとも考えられそうです。幾つかできる果実ですが、個々の果実は同じ生理状態、同じ環境条件下にあるものではありませんので、このような果実内種子発芽が起きるものも起きないものもあることを理解してください。




【小原隆由先生のお答え】
一般に、果実内では発芽が起こらない原因としては、種子が休眠状態にあること、果実内に発芽抑制物質があること、酸素不足、浸透圧により種子が吸水しないこと、等が挙げられます。
 一方、カボチャの発芽については、以下のことが知られています。

1)採種直後の種子は休眠状態にあり、休眠の深さは、果実が未熟なうちは深く、果実の熟度が進むほど浅くなる。 
2)カボチャの種皮と胚には発芽抑制物質が存在し、果実内での発芽は抑制されている。 
3)カボチャの種子は通常15〜35℃で発芽可能だが、採種直後の種子は30℃程度の高温でないと発芽しない。

 上記の知見と今年の高温条件を併せて考えますと、カボチャの種子が果実内で発芽した原因として、以下のことが考えられます。

a) 果実および種子の成熟が進み、種子の休眠が浅い状態になっていた。
b) 果実内の高温(30℃付近)となり、発芽に適した温度が継続した。
c) 果実内に空洞ができ、酸素の供給が良くなった。
d) 果実内の成分変化により、発芽抑制作用が減少した。
e) 果実内の水分状態の変化により、浸透圧が変化し、種子が発芽に必要な水分を吸収した。

これらの原因がいくつか重なり合って、果実内の発芽が起きたのではないかと考えられます。果実内で種子が発芽してしまう現象は、カボチャ等のウリ類で時々見られますが、今夏は高温のためか、頻度が高いようです。

小原隆由 (野菜茶業研究所 野菜育種研究チーム)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2010-10-21
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