一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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裸子植物の胚乳と受精について

質問者:   高校生   ナッパ
登録番号2328   登録日:2010-10-19
こんばんは。

高校での生物の授業中に、先生がインターネットを使ってもあまり分からなかったとおっしゃっていたことなのですが、

①裸子植物の胚乳は前胚乳と呼ばれるもので、被子植物の3nとは違い、単相nだが、
これはどのようにしていつ頃発生するのでしょうか

②裸子植物の受精は,受粉期[4月ごろ]から時間の経った10月ごろに行われ、その間、精細胞は待機しているそうですが、
なぜ、時間をおく必要があるのでしょうか。又その間精細胞はどこで、どの様にして待機しているのでしょうか。


以上2点に関してお願いします
ナッパさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。高校の教科書では裸子植物のことはあまり詳しく扱っていないですね。分かりにくい事かもしれません。

[回答]
下記の二つの質問は関係している事なのでまとめて回答します。マツの場合を例にとって説明します。
受粉は春におこなわれます。風などで飛んできた花粉は、胚珠先端の珠孔付近にある液滴に付着し、液滴が乾燥するにしたがって、花粉は珠孔に引き寄せられます。接触後直ちに花粉は発芽して、花粉管が伸び始めます。珠心(大胞子のう)内で減数分裂により4つの大胞子が作られますが、その内1つだけが残って、ゆっくり時間をかけて雌性配偶体に発達します。この雌性配偶体の発達の初期に核分裂が進み、遊離状態の核が2,000個位になったとき初めて細胞壁ができて、それぞれの核が一つ一つの細胞に収まります。受粉後約13ケ月の事です。更に2ケ月後雌性配偶体の珠孔のところで2〜3個の造卵器がつくられます。一方花粉管はその間発達中の雌性配偶体に向かって、ゆっくりと、珠心の組織を分解しながら伸びていきます。花粉管は雌性配偶体が完成するまで途中で待機していると考えられます。完成すると多分何かの信号が出て花粉管は伸長を再開するのではないかと推定されます。受粉後12ケ月位で花粉管(雄性配偶体に相当)内に生殖細胞ができて、最終的に二つの精子が形成されます。受粉後15ケ月で花粉管はやっと造卵器の卵細胞に到着して受精が行われます。二個の精子の打ち一個は退化して消滅します。雌性配偶体は養分の貯蔵組織の役割を果たすので、被子植物の胚乳に相当します。核相はnということになります。ただし、これを胚乳と呼ぶ事はできません。

受粉から受精までの時間は、ほとんどの被子植物では長くかかりません。種によって数日から数時間の開きがありますが。中にはマンサク科のフウやブナ科のいくつかの種では裸子植物と同じように数週間から数ヶ月かかります。裸子植物でもマツの仲間は上記のように特に時間がかかります。なぜ、時間をおく必要があるのかという問いには答えられませんが、雌性配偶体も雄性配偶体もお互いに受精が整うために時間がかかるのです。なお、裸子植物と被子植物の胚乳に関しては登録番号1791の回答を是非読んで下さい。なお、何ヶ月と言う数値はおおよそのことで、種や生育環境、気象などで違いはあると思います。



本回答は、琉球大学の高相徳志郎先生のご意見を反映させて修正しています。

柿本 辰男(JSPP広報委員長)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2010-11-30
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