一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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下葉の反射光は上の葉の裏の光合成能を高めるのか?

質問者:   教員   ハッパ
登録番号2332   登録日:2010-10-25
高校で生物を教えています。葉の透過光に関して、緑葉は上から光を受けると柵状組織で赤・青色光の成分がよく吸収されるので、海綿状組織には緑色光の成分が届き、繰り返し反射することでよく吸収されて光合成に利用されると聞きました。葉が重なっている場合、下の葉が反射した緑色光が散乱して上の葉の裏面から入り、より光合成を高めているということはあるのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
ハッパさま
 
本質問コーナーの登録番号1855の回答にありますように、葉の表側にある柵状組織の葉緑体にあるクロロフィールは、太陽光の内、青色、赤色の波長領域の光を吸収し、緑色領域の光を余り吸収しませんが、ここで吸収されなかった緑色の波長領域の光も柵状組織の下、葉の裏側にある海綿状組織の葉緑体にあるクロロフィールによって散乱を繰り返し吸収されます。一枚の葉に太陽光が照射されて、それが1)葉の表面で反射、2)葉緑体によって吸収され光合成に役立つ、3)葉を透過する、それぞれの割合は植物の種によって異なりますが、3)は成長した葉では数%以下と考えてよいでしょう。この葉を透過した緑色の光はその葉の下に位置する葉に吸収されますが、太陽光に比べれば光合成に対する寄与は大きくないと考えられます。
 
葉の表面に太陽光が照射された時の反射は主として葉の表面の微細構造による物理的な散乱、反射によるもので、この場合、特に、緑色の光が反射されやすいことはありません。また、葉の本来の役割から、反射で太陽光を遮って光合成ができないようにするのは、一般には考えにくいことです。葉が若い時でまだ光合成装置が細胞内で完成していない段階では、太陽光の強光による障害を防ぐために反射で光を遮ることが必要なことも考えられますが、この場合でも特に緑色の光が反射しやすいとは考えられません。

ご質問のような、下の葉の(緑色とは限らず)反射光が、その上に位置する葉の柵状組織での光合成に寄与しているかどうかは、下の葉に太陽光が当たるようにしつつ、上の葉の下側に黒い紙などを置き下の葉の反射光が上の葉に当たらないようにして上の葉の光合成を測定すれば、上の葉の光合成に下の葉の反射光が寄与しているかどうかを調べることができるでしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-07-19
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