一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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セルロースを合成している時の細胞の特徴

質問者:   大学生   イカロス
登録番号2335   登録日:2010-10-27
現在セルロース合成の勉強をしています。

細胞膜上にあるセルロース合成酵素が関与しているということは調べられました。しかし、その細胞膜よりも内側の部分(細胞小器官)の特徴が分かりません。

セルロースを作っている細胞の細胞小器官には、何か特徴(例えば、葉緑体やミトコンドリアの割合がやたら多い など)があるのでしょうか。
イカロス様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。セルロースだけを合成している細胞とか、セルロースを全く合成していない細胞とかがありそうにないので、セルロース合成をしている細胞に特徴的な微細構造は明らかにされていないと思いましたが、セルロース合成の専門家の林 隆久先生に頂いたご質問の回答をお願いいたしました。林先生のご回答の中にもセルロースを作っていない細胞はないということが書かれていますが、そういう状況ですので、セルロースを合成している細胞に特徴的な微細構造はやはり明らかにされていないと思います。イカロスさんがセルロース合成の勉強をしているということで、もし、これをテーマに研究なさるのでしたら、培養細胞の細胞壁を取り除きプロトプラストを作ると、プロトプラストは盛んに細胞壁合成を行いますので、この時、セルロースも盛んに合成されます。そんな細胞壁を再生しつつあるプロトプラストの微細構造の変化を調べると面白いのではないかと思います。またセルロース合成を特異的に阻害するジクロロベンゾニトリルという薬がありますが、この薬でセルロース合成を阻害したときの微細構造についての観察も面白いと思います。


林 隆久先生のご回答

セルロースは、植物の骨格を構成する成分ですので、活発な時期や不活発な時期の差はあれども、細胞は死ぬまで殆ど絶え間なくセルロースを作っています。植物生理学の分野で1980年頃に、ゴルジ膜に存在するGlucan synthase I(ゴルジのマーカー酵素)がセルロース合成酵素のproenzymeであるか否か激しく議論されましたが、未だに決着していません。そうであるならば、細胞小器官のゴルジ膜は細胞膜と融合を繰り返しながらセルロース合成酵素を供給していることになります。一方、一次壁及び二次壁セルロース生合成の過程では、キシログルカンが合成・分泌されてセルロースミクロフィブリルを構成するエレメンタリーフィブリルに結合していきます。キシログルカンはゴルジ膜の中で合成されますので、やはりセルロースの生合成はゴルジと共役していることは間違いありません。

林 隆久(東京農業大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2010-11-04
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