質問者:
教員
植物だいすき雄
登録番号2343
登録日:2010-11-05
高校で生物を教えています。矮性体の発芽
植物ホルモンの分野で、疑問に思った点があるのでお尋ねします。
ジベレリンは、茎の伸長に関わっており、これが作れないと茎の伸長が著しく低下して矮性体となる。イネやムギなどでは矮性体は倒れにくいので利用されている例もある。という趣旨のことを説明していますが、これと併せて、同じジベレリンは、発芽の促進に関わっているということを、オオムギ種子のアミラーゼ誘導のしくみで説明しています。
そこで、疑問点ですが、矮性体はジベレリンの作る能力が低い(ジベレリン合成系の遺伝子欠損?)のに、発芽はうまく行っているのかどうかということです。
発芽時のGA合成経路と茎の伸長にかかわるGA合成経路は別なのでしょうか。また何か違う仕組みがあるのでしょうか。
申し訳ありませんが、お答えいただけると助かります。よろしくお願いします。
植物だいすき雄 さま
みんなのひろば質問コーナーへようこそ。歓迎します。植物ホルモンと種子発芽の研究の最先端の研究をされている理化学研究所・植物科学研究センターの山口信次郎先生に答えて頂きました。
ご質問ありがとうございました。ご指摘のとおり、ジベレリンには茎の伸長以外にもいろいろな働きがありますが、ジベレリンの基本的な合成経路は共通であると考えられています。
ジベレリンは6種類の異なる酵素の連続的な働きによって作られる複雑な分子です。ここではこれらを酵素A、酵素B・・・酵素Fと呼びます。植物は、酵素A〜Fのうち一つを完全に失うと、ジベレリンを作ることができなくなります。この場合、植物種にもよりますが、茎葉部の矮性化だけでなく、発芽能の低下、花芽分化や雄しべの発達の異常(稔性の低下)などが引き起こされます。ただし、多くの植物はジベレリン合成経路の後半部分の酵素を複数もっていることが分かっています。つまり、同じ働きをもつ酵素F-1、F-2、F-3・・といった具合です。このように、一つの生物が同じ働きもつ酵素を複数もつとき、これらをアイソザイムと呼びます。アイソザイムは酵素としては同じですが、働く場所や時期が違うことがあります。例えば、酵素F-1は茎が伸長するときに働き、酵素F-2は種子発芽のときに働く、などです。先生が授業でお話されている「倒伏しにくいイネの矮性品種」は、おもに茎葉部の伸長に必要なジベレリン合成に関わるアイソザイム(の遺伝子)のみが欠損しているため、稔性や種子収量など他の形質に悪影響を与えることなく収量の増大に繋がったsd-1(semidwarf-1)の例だと思われます。つまり、ジベレリン合成が低下した変異体(品種)にはいろいろなパターンのものが存在していて、ジベレリン合成能がいつ、どこで、どの程度低くなっているのかによって、その影響が茎の伸長以外にも現れるのかどうかが決まる、ということになります。
山口信次郎
植物生理学会広報委員長 柿本辰男
みんなのひろば質問コーナーへようこそ。歓迎します。植物ホルモンと種子発芽の研究の最先端の研究をされている理化学研究所・植物科学研究センターの山口信次郎先生に答えて頂きました。
ご質問ありがとうございました。ご指摘のとおり、ジベレリンには茎の伸長以外にもいろいろな働きがありますが、ジベレリンの基本的な合成経路は共通であると考えられています。
ジベレリンは6種類の異なる酵素の連続的な働きによって作られる複雑な分子です。ここではこれらを酵素A、酵素B・・・酵素Fと呼びます。植物は、酵素A〜Fのうち一つを完全に失うと、ジベレリンを作ることができなくなります。この場合、植物種にもよりますが、茎葉部の矮性化だけでなく、発芽能の低下、花芽分化や雄しべの発達の異常(稔性の低下)などが引き起こされます。ただし、多くの植物はジベレリン合成経路の後半部分の酵素を複数もっていることが分かっています。つまり、同じ働きをもつ酵素F-1、F-2、F-3・・といった具合です。このように、一つの生物が同じ働きもつ酵素を複数もつとき、これらをアイソザイムと呼びます。アイソザイムは酵素としては同じですが、働く場所や時期が違うことがあります。例えば、酵素F-1は茎が伸長するときに働き、酵素F-2は種子発芽のときに働く、などです。先生が授業でお話されている「倒伏しにくいイネの矮性品種」は、おもに茎葉部の伸長に必要なジベレリン合成に関わるアイソザイム(の遺伝子)のみが欠損しているため、稔性や種子収量など他の形質に悪影響を与えることなく収量の増大に繋がったsd-1(semidwarf-1)の例だと思われます。つまり、ジベレリン合成が低下した変異体(品種)にはいろいろなパターンのものが存在していて、ジベレリン合成能がいつ、どこで、どの程度低くなっているのかによって、その影響が茎の伸長以外にも現れるのかどうかが決まる、ということになります。
山口信次郎
植物生理学会広報委員長 柿本辰男
回答日:2010-11-15