一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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C3、C4植物の記載に関する件

質問者:   会社員   イチジク
登録番号2347   登録日:2010-11-17
東京で会社員をやっています。
趣味で庭いじりをやるうちに、植物にも少し興味を持ち始めました。

今C3やC4植物の話が雑草問題などでよく話題に上がり、その機能の違いも大きく注目されています。しかし、どの植物図鑑、インターネット情報にも、この植物がC3、C4とあまり記載されていないように思います。

C3植物が全体の9割ということですがC3、C4植物は、科や属に必ずしも影響されるわけではなく、イネ科の中でもC3やC4が混在しており、その情報は重要ではないでしょうか。

C3、C4が記載されている文献やHP、または研究は存在するのでしょうか?
イチジク 様



ご質問をありがとうございます。



現在の知識では、陸上植物種の約3パーセント(全植物種の約1ペーセント?)に相当する数千種程度の限られた植物がC4光合成を営むものと推定されています。しかし、C4植物の光合成によって固定される二酸化炭素の量(したがって、バイオマスに占めるC4植物の割合)は、地球規模で考えるとかなり大きなものになると見積もられております。



C4光合成を営む植物は被子植物に限られていますが、その中には分類体系上では広範囲な種類の植物が含まれております。とは言っても、C4光合成を営む植物の種類は、双子葉植物よりは単子葉植物に多く、単子葉植物の中ではイネ科などのごく限られた科の植物に集中しています。一方、双子葉植物でC4光合成を営むものは10科以上の科にまたがっており、アカザ科(550種以上)、ヒユ科(250種以上)などの植物に多く、カヤツリグサ科、キク科、アブラナ科、トウダイグサ科などにも見られます。



C4光合成を行っているかどうかを知るには、例えば放射ラベルした二酸化炭素が固定されて出来て来る産物を同定してみることになりますが、光合成組織を光学顕微鏡で観察することによっても大体の見当がつけられます。本コーナーのQ/A(登録登録0029)の後半を読んでいただけると分かりますが、C4植物の葉の組織には、一般に、“クランツ構造”と呼ばれる独特の構造がみられます(ここでは説明を省略しますが、調べてみて下さい)。ただし、クランツ構造を備えていない植物の場合でもC4光合成を行っているものもあり、また、C3とC4の中間型の植物、環境条件によってC3とC4の光合成タイプを切り替える植物なども知られており、実情はかなり複雑です。



以上のような訳で、ご質問に直接お答えすることは出来ておりませんが、説明を省略した“クランツ構造”の有無がC3/C4判定の大まかな目安になりますので、もし顕微鏡が使えるようでしたら調べて見られることをお勧めします。C4植物につての記述は「植物生理学」や「光合成」に関する書物には必ず書かれていますので、図書館で調べて見られては如何でしょうか(C3/C4光合成は植物の重要な生理特性ですが、必ずしも分類体系に沿った話とは言えないので、植物図鑑の説明文では書かれることが少ないと思います)。


JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2010-11-22
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