一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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クスノキの落葉、落枝

質問者:   一般   くりちゃん
登録番号2352   登録日:2010-11-27
以前、クスノキの落葉について何回か質問させていただき、解りやすくご回答いただきありがとうございました。
エノキ、ケヤキなども、枝に離層を形成して枝を落としているのを見ますが、これらにはいずれも実と葉がついて落ちているのを見ます。これらは葉をつけて種を風によって遠くまで飛ばすのだと理由を勝手につけています。
クスノキ、クヌギも枝に離層を形成して落ちていますが、実は付いていません。
実や葉をつけずに枝を落とすのには何か理由があるのでしょうか。
よろしくお願い致します。
くりちゃん様

 みんなのひろばへのご質問有り難うございました。よく枝の脱離について観察なさっておられますね。葉や実をつけた枝の落ちる事について,種子の散布に役立っているのではないかとのお考えにぴったりの植物がいるので、それをご紹介します。

ホウキギのようなアカザ科の植物などでは、実が熟した後、茎の根元、地上部すれすれのところに離層が形成され、地上部まるごとが地面に倒れ、風に吹かれて種をまきちらしながら転がり廻ることが知られています。ご覧になったエノキやケヤキの場合も種子の散布に役立っている可能性は十分に考えられます。ただ、一つだけ、ケヤキの枝については離層を形成しないことが知られており、枝の基部で不規則に折れる良い例として教科書にはあげられているので、ケヤキの落枝については観察し直して下さい。本題に入ります。枝の脱離の一番の目的は、弱った枝を落とすことにあります。クスノキはその良い例です。ある枝が生き残れるかどうかは、枝に付いている葉の光合成による稼ぎが、葉や枝の呼吸による消費を上回っているかどうかによります。植物では、赤字の枝を他の黒字の枝が助けるという事をしませんので、赤字の枝は落とされることになります。枝の脱離は赤字の枝を落とすことに働いているのです。self-pruning (自己剪定)と呼ばれています。クスノキの幹を見て下さい。すっきりしているでしょう。自己剪定によるものです。
JSPPサイエンス・アドバイザー
柴岡弘郎
回答日:2010-11-29
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