一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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主脈が二本の葉について

質問者:   一般   EMU
登録番号2356   登録日:2010-12-02
こんにちは。
植物園の温室内の鉢植えの植物についてお訊ねします。
名札がないのですが、サトイモ科かクズウコン科のものと思われる、葉梢を含めて1メートル以上の大きな葉が叢生しています。
よく見ると、どの葉にも主脈が二本あり、先端でまた繋がっています。
しかし、この大きな葉、若いうちは二本繋がった形ですが、枯れた葉を見ると、まん中から切れ目が入り、ごく普通の二枚の葉が、何かの便宜上、くっついているのではないかと思われます。
一枚ずつでは、強度が足りず垂れ下がってしまって光合成に不利であるとか・・
植物の目的はよく分かりませんが、葉っぱ同士がくっつきあって助け合う、というようなことは、植物界ではよくあることでしょうか。あるとすれば、どんなものに見られるでしょうか。
教えていただけるとありがたいです。
EMU様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。私はむかしむかし一度emuみたいだと言われた事があるのを思い出しました。それとも、Economic Monetary Unionと関係があるのでしょうか。さて。以下のご質問ですが、写真でもないとはっきりした事はいえないのですが、二枚の葉がくっ付いている植物は珍しいものではありません。器官がくっ付いた形を「合着した」といっています。英語ではcoalescent (fused) といいます。托葉や葉柄などが合着したものは結構多くあります。
葉の場合よく知られているのはコウヤマキの葉です。マツの針葉のように細長いですが先端は凹んでおり、両側に一本ずつの維管束(葉脈)が見られます。ただ、コウヤマキでは枯れてから二つに分かれる事はありません。椿の品種のなかに「七福神」と言うのがあって、これにはラッパ状、盃状や二枚の合着葉などいろいろな葉の形状が見られるそうです。多肉植物(サボテン)の中にConophytum (コノフィツム)属やLithops (リトプス)属のように二枚の多肉の葉が合着して円筒形や円錐形になったものがあります。園芸店でご覧になった事があるかもしれません。また、ヤナギ属の芽鱗のように二枚の葉が合着してできたものもあります。部分的な合着の例としてはオオバハンゲがあります。変わった例ではツキヌキエンドウ(スイカズラ科)と言う外来の植物がありますが、茎の先端に近い葉は基部が合着し、その中央を茎が貫いているいます(名前の由来)。他にも例はあると思います。最近の研究で葉の合着に関係した遺伝子が報告されています。というわけで合着は植物界ではよくあることです。それに、普通の葉に混じって異常葉としてあらわれることもあります。なぜ、合着葉ができたかという事は分かりません。進化の過程の中で、そういう形態をとることがその植物種にとって有利だったのでしょう。合着すると確かに機械的には強度が増すと考えられますから、それも理由のうちの一つかもしれません。サボテンなどは合着によって表面積を減らし水分の蒸発を防いでいるともいえましょう。そういう事を研究している人がいたら聞いてみたいと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2010-12-07